時たま、旅人

自称世界遺産ハンターが行く!旅好き会社員の備忘録

モルモン教会の総本山テンプルスクエア

 冬季オリンピックの開催が最近のことのようにも思えるソルトレイクシティ(2002年)は、迫害を逃れてこの土地にやってきたモルモン教徒が開拓した宗教都市として広く知られています。全世界にいる1500万人の信徒のうち14%がソルトレイクシティのあるユタ州に住んでいて、この街に暮らす人々の多くがモルモン教徒だと言われています。だから、モルモン教のことを知らずにこの街の観光を楽しむことはまず出来ません。

 

簡単に解説すると・・・モルモン教会というのは教典「モルモン書」に由来する通称で、立ち上げたのはわずか14歳のジョセフ・スミス・ジュニアでした。教派間の争いや矛盾に疑問を抱き、どの教会に加わるべきか頭を悩ませていた若きジョセフの祈り前に神とイエス・キリストが姿を現し「どの教会も誤っているので加わってはいけない」との助言を授けたそうです。神に選ばれた預言者ジョセフが1830年に設立したのが、モルモン教の通称で知られる末日聖徒イエス・キリスト教会です。

 

ソルトレイクシティの真ん中の超一等地(日本の銀座?)は、モルモン教会の本部と関連施設が集まったテンプルスクエアになっています。その南側の道路沿いに建つイタリアルネッサンス風の建物がジョセフ・スミス記念館です。1911年にユタホテルとして建造され、1993年にジョセフの名前を冠した多目的施設として生まれ変わりました。f:id:greenbirdchuro:20190629214402j:plain

 

ジョセフ・スミス記念館を背にして建っているのがブリガム・ヤングの像です。不慮の死を遂げた創始者ジョセフの後を継いだ2代目予言者ヤングはモルモン教徒達を率いて迫害から逃れ、砂漠を越えて、彼らを約束の地へ導きました。ヤングの指揮でモルモン教徒達が開拓した約束の地こそがソルトレイクシティ周辺地域だったのです。つまりヤングはこの街を創生した人物です。旧約聖書のモーゼを彷彿とさせる壮大なストーリーの主役であるヤングは「アメリカのモーゼ」とも呼ばれています。f:id:greenbirdchuro:20190629214407j:plain

 

そびえ立つ白亜の建物がソルトレイク神殿です。ヤング率いる開拓団​が​この地に​入った​直後に建設が決まった歴史ある建物ですが、完成したのはユタ州で4番目でした。なぜなら1853年に着工してから完成の1893年まで40年もの歳月がかかったからです。こんなに立派な建物なら致し方なしというところですね。f:id:greenbirdchuro:20190701201952j:plain

 

どれが正面か判別がつかないくらいどこから見ても豪華なネオ・ゴシック様式の建物ですが、建物の側面から見ると東西にそれぞれ3つの尖塔があることがわかります。f:id:greenbirdchuro:20190702104100j:image


普通の教会のように冠婚葬祭も執り行われるようですが、一般の観光客は神殿内に入ることができません。それどころかモルモン教会の会員でも推薦状を持っているような人しか入れないそうです。信徒か否かに関わらず広く開放されている教会が多いことを考えると、この神殿がモルモン教徒にとっていかに神聖で崇高な場所か窺えます。f:id:greenbirdchuro:20190629213833j:plain

 

神殿の南北にはそれぞれ観光客向けのビジターセンターがあり、サウスビジターセンターでは神殿の縮尺模型を見ることが出来ました。立派は立派なんですが、何か想像を超えるような神がかったものでもあるのかも!?と期待していたので、意外にも普通でちょっとガッカリです。f:id:greenbirdchuro:20190701202000j:plain

 

ビジターセンター内部はモルモン教や彼らの歩んだ開拓の歴史に関する史料や写真が展示されたちょっとした博物館になっていて、なかなか見応えがありました。旅人や商人に不毛の地だと思われていた荒地に灌漑を引き、作物を植え、植樹をして・・・全米屈指の美しい大都市を作り上げたのですから本当に大したものです。
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テンプルスクエアで見かける人々は(中高生くらいの子も含めて)とてもキッチリした服装をしていました。厳しい戒律のためノースリーブで外を歩くなんてもってのほかで、スカートの下にも必ずストッキングを履いて肌の露出を極力さけているそうです。教会員かどうかは一目瞭然です。そんな彼らの中に度々見かけるのが、色々な国の国旗を胸につけた若い女性二人組のボランティアガイドです。彼女達の正体は大学入学前や休学期間を利用した自費のボランティア活動中(もちろん同時に布教活動中)の宣教師!宣教師は髪の薄いおじさんというわたしの勝手な思い込みを根底からひっくり返してくれる若々しさで、本当に生き生きと楽しそうに活動していました。彼女たちのキラキラの源は信じる者だけが持てる強さなのかもしれません。

 

神殿の西側には大きなドーム型の屋根が特徴的なタバナクル公会堂がありました。1867年に建てられたタバナクルの名称は、旧約聖書の中でモーセに連れられてエジプトを脱出したイスラエル人たちが持っていた移動式の儀式セットに由来しています。北側に新設されたカンファレンスセンターに役目を譲って以降は主にコンサートホールとして使用されています。無料のパイプオルガンコンサートが毎日開かれていると知って、わたしも聴きに行ってみました。
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タバナクルの正面には11,623本のパイプからなる世界最大級のパイプオルガンが設置されていました。パイプオルガンの立派さと並んで特筆すべきは最大限の音響効果を期待して設計されたスムーズな円形天井です。ペンを落としても響くと言われ、ちょっと盛ってるな・・・なんて思ったのですが、実際にスタッフが手持ちのペンをテーブルに落とすとタバナクル全体にその音が響き渡りました。譜面をめくる音もとても響きます。下手な音を立てたら注目を浴びることを悟ったわたし達聴衆がコンサート終了までお行儀よくしていたの言うまでもありません。f:id:greenbirdchuro:20190629130651j:image

 

無料とは思えないクオリティのオルガンコンサートは建物の音響効果も手伝って大迫力でした。演奏に合わせて色とりどりに変化する照明もとても幻想的。ちなみにこのタバナクルはモルモンタバナクル合唱団の本拠地でもあります。現存する世界最古かつ最大規模の合唱団のメンバーは全員がボランティアでもちろん教会員。米大統領就任式にも度々招待される由緒ある合唱団で、オリンピック開会式での彼らの歌声を覚えている方もいるかもしれません。ここで練習したらさぞ気持ちいいでしょうね。それとも誤魔化しが効かなくて音痴はさらに音痴に聞こえるだけでしょうか。f:id:greenbirdchuro:20190702113503j:image

 

タバナクル の南側には1877年に建築されたアッセンブリーホールがありました。建物のファザードを覆う粗削りのモンゾニ岩と20本以上もある尖塔が特徴的で、神殿建設の余剰石材で建てられたとは思えない上品な佇まいです。f:id:greenbirdchuro:20190629130622j:image

 

神殿同様、アッセンブリーホールもどちらが正面なのかわかりにくいですが、こちらがタバナクル側です。f:id:greenbirdchuro:20190629213509j:plain

 

モルモン教や開拓の歴史を象徴する銅像や石碑もあちこちにありました。f:id:greenbirdchuro:20190629214618j:plain

ユタの手車開拓者像。f:id:greenbirdchuro:20190629214622j:plain

モルモン書の石碑。f:id:greenbirdchuro:20190629214411j:plain

 

観光の合間にチーズケーキファクトリーで食事をとりました。アメリカのコメディドラマ「ビッグバンセオリー」のメインキャストであるペニー達がアルバイトしていたレストランチェーンです。オーダーしたのはエビとチキンのカレーソース煮込みとレモネード。なんと、アメリカ大陸上陸2日目になるというのにアルコールをまだ一滴も口にしていません!神様から賜った身体を大切にするという理由でモルモン教徒はお酒を口にしません。街中のレストランで飲酒する人の姿も見かけません。郷に入っては・・・なのでユタ州を脱出するまでアルコールはお預けです。f:id:greenbirdchuro:20190702145320j:image

 午後も観光は続きます。

 

 

 

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