一夫多妻の家とユタ州議事堂
ソルトレイクシティ観光は続きます。
白い支柱が印象的なビーハイブハウスはブリガム・ヤングの自宅兼事務所として1854 年に建てられたものです。ヤングの義兄弟であるトルーマン設計の邸宅は1世紀以上前に建てられたとは思えないほど良好な保存状態でした。内部はモルモン教の歴史やヤング家の生活を紹介する博物館になっていました。
入場は無料ですが、もれなくモルモン教の宣教師ガイドがつきます。それが嫌で受付で引き返す人もいました。英語でかまわないと言ったのですが、日本語の話せる方をわざわざ呼び出してくれました。アサインされたのは日本人の母親を持つ若いアメリカ人女性で、研修中だというコロンビア人女性と一緒に30分ほどガイドしてくれました。
ヤングが色々な人と面会をしたという執務室です。ビーハイブ (ミツバチの巣) は勤勉を意味するモルモン教会の象徴ですが、ヤング本人もとても勤勉で働き者だったそうです。それに、どんなに忙しくても他人のために時間をとった優しい人だったとか。
どの部屋にも 1800 年代にヤング家族が暮らしていた頃と同じように家具が置かれていました。内装や調度品も素敵ですね。
ビーハイブハウスの隣にはライオンハウスがあります。大胆な個性から「神のライオン」と呼ばれることもあったヤング。玄関上にライオン像があるのは彼の渾名のせいでしょうね。丁寧な修復で建てられた1856年当時の姿が保たれています。左右対称に並ぶ緑の鎧戸付きの窓からこの建物が3階建てであることがわかります。お隣にビーハイブハウスもあるのに豪邸すぎやしないか?と思えますが、大きな家が2軒も必要だったのはヤングが多重婚者だったためでした。彼の妻の人数については諸説ありますが、宣教師ガイドによると57人だったそうです(Wikipediaでは55人)。宗教指導者が若い女性信者を洗脳するお決まりのパターンか!!と「ゲ〜ッ」と思わず下品な声を漏らしてしまったのですが、慌てたガイドさんの説明によると・・・行き場のない寡婦や身寄りのない女性の面倒を見るためにどんどん婚姻関係を結んだので、書類上だけの妻が多く、全ての女性が夫婦関係にあったわけではないようです。なんだいい人じゃん!!ライオンハウスはそんな彼の大家族のために建てられたものでした。ガイド終了後にはお決まりの布教活動が始まります。と言っても、モルモン書に興味があればどうでしょう?くらいの緩いものでした。旅の途中なので荷物になるからと言って丁寧にお断りしましたが、荷物になるのが面倒でなければ無料で頂けるのでモルモンの世界を垣間見ることが出来ると思います。住人の多くがモルモン教徒なのでソルトレイクシティではみんなが親切だと書いてあるガイド本を見せると宣教師の2人もとても喜んでいました。
かつてのヤングの農場がはブリガム・ヤング歴史公園になっています。
水車と池のある公園内には19世紀の頃の生活を描いた彫像も点在していました。
テンプルスクエアの北側には2000年に完成した収容人数21,000人の巨大なカンファレンスセンターがあります。モルモン教の最も重要な行事である年2回の総会はここで行われます。どうやらわたしが訪れた翌週に開催される予定だったようで、すっかり打ち解けた宣教師ガイドに「預言者のお声を直に聞けるなんて興奮が止まりませんよね!?」と問われて言葉に詰まってしまいました。う〜ん、わたしは仏教徒だし、世界中で放送されるらしい総会なるものも見たことないし、どのチャンネルで見れるのかも知らないし・・・。ちなみに90歳だった第16代の預言者トーマス・S・モンソンはこの数ヶ月後に逝去されたので、文字通り貴重な最後のお言葉になったわけです。
市街地から坂道を登ること20分、ユタ州議事堂のあるキャピトル・ヒルにやってきました。1978年には国家歴史登録財に指定された1916年築の州議事堂は、全米で2番目に美しい議事堂に選ばれたという評判に違わない豪華な外観で、宮殿だと言われても全く違和感を感じないネオクラシカル・リバイバル様式の見本のような建物です。ちなみに、議事堂だけでなく、キャピトル・ヒル地区も「キャピトル・ヒル歴史地区」として国家歴史登録財に指定されています。
幅123.1m・奥行き73.2mの議事堂の外壁はソルトレイクシティ郊外で産出されたモンゾニ岩で造られています。高さ87.2mのドーム部分を覆う銅も地元ユタ州産。初めて来たはずなのにずっとこの議事堂を見たことある気がしていたんですが、リース・ウィザースプーン主演の「キューティ・ブロンド/ハッピーMAX」のロケ地だったようです。
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議事堂内部に入ると大理石でできた24本のイオニア式円柱が並ぶ大ホールがありました。中央の円形広間(ロタンダ)にはシャンデリアが吊るされています。真っ白な大理石の壁と柱、人が見ていなければ頬ずりしたいくらいツヤツヤと光っていました。
ロタンダには州を象徴する4つの銅像が据えられていました。何よりも目をひくのが壁面とドーム内側に描かれた美しい絵画です。大恐慌時代に地元住民が描いたこの絵画には、入植者と先住民の出会いから始まりるユタ州の歴史がつぶさに描かれていました。
これまで、海外からの国賓やアメリカの大統領の歴々を迎えてきたというレセプションルームは、内装や調度品のどれをとっても豪華としか言いようがありません。
下院議員 75 名が集う下院議場の内装も豪華なのに落ち着いた雰囲気があって素晴らしい。日本の議場とは違うゆったりした座席で、ここならじっくり議論できそう。
議事堂のあるキャピトル・ヒルからはダウンタウンを見下ろすことができます。碁盤の目のようなキレイな街並みは開拓者達の涙ぐましい努力と犠牲の賜物です。
ベトナム戦争の記念碑やモルモン大隊の記念碑もありました。
州議事堂の向いにある建物は1866年から1894年までシティホールとして利用されていましたた。急速に発展するソルトレイクシティには小さすぎたので早々にその役目を終えて、現在は州の旅行事務所と利用されています。
ソルトレイクシティにしばしのお別れを告げて、車で3時間ちょっと。Never LostのおかげでLOSTの多い道中でしたが、なんとか無事にアイダホ・フォールズまでやって来ました。
まず向かったのは街で一番の呼び声高いステーキハウス。週末の家族連れに混じって並ぶこと30分・・・。厚さ2㎝はあろうかというプライムリブが出てきました。肉らしい噛みごたえと柔らかさを両立したこの一品に、これまで食べて来たローストビーフは何だったのか?と思わざるを得ません。正真正銘のアイダホポテト添えです。
こんな立派なサラダが付いてました。初めにサラダをオーダーしようとしたら、ベテランウエイトレスさんに「やめときな、あんたには多すぎるよ」と止められたわけです。
しかし、こんなに美味しいお肉が食べれるというのに、ここでも誰もアルコールを飲んでいません!!たかだか3時間走ったくらいではモルモン教会の影響下から抜けることは出来ないようです。神様から貰った身体を大事にしながら旅は続きます。