時たま、旅人

自称世界遺産ハンターが行く!旅好き会社員の備忘録

マチュ・ピチュ遺跡 後編(謎だらけの失われた都市)

1911年にアメリカの探検家ハイラム・ビンガムによって発見されたことで400年にも及ぶ長い眠りから目覚めたマチュ・ピチュ遺跡はマチュピチュ山とワイナピチュ山の間に挟まれるように存在しています。

 

ケチュア語で年老いた峰という意味のマチュ・ピチュに対して、ワイナピチュが意味するのは若い峰。遺跡の向こう(西側)に天を衝くようにそびえている切り立った標高2720mの山がワイナピチュです。とても登れそうには見えませんが、インカの時代には見張り台の役目を果たしていました。今でも当時の登山道を利用して登ることができます。ちなみに、わたしは入場制限にかかってしまって登ることができませんでした。(残念なようなホッとしたような・・・。)f:id:greenbirdchuro:20190822235311j:plain

 

高さ2.2mの石の門は市街地入口、つまりマチュ・ピチュの正門だった場所です。大きな石をしっかりと組み上げて造られた門の上部には縄を通すためと思しき輪が取り付けられています。門の左右に造られた窪み(左は人で隠れてしまっていますが)にも縄がかけられるような細工がしてありました。これらを利用して扉を固定していたことがうかがえます。f:id:greenbirdchuro:20190822235158j:plain

 

入口の門をくぐると、右側にカリャンカと呼ばれる2つの部屋があります。マチュ・ピチュを訪れた人がまず休息をとるために造られた部屋だと考えられています。ホテルのロビーみたいなものでしょうか。
f:id:greenbirdchuro:20190823192908j:plain

 

遺跡内には石切り場も残っていました。こんな大きな岩からひとつひとつの石を切り出して形を整える作業がどんなに大変なものだったか想像がつきませんが、別の場所から石を運ぶ必要がなかった点においては、他のインカの遺跡よりも恵まれていたのかもしれません。f:id:greenbirdchuro:20190823194051j:plain


石切り場からワイナピチュ側に進むと、一段高い場所に広場があり、それを3方から囲むように3つの石の建物が並んでいます。広場に面して建つ主神殿の壁には、コリカンチャの神殿と同じように17個の飾り棚が設けられていました。4.5mもの大きさの石を土台に用いた主神殿の石組みは、マチュ・ピチュの他の部分と比べても精巧で、1つ1つの石が均一な四角形をしています。このことから、この神殿がいかに神聖で重要な場所だったかがうかがえます。f:id:greenbirdchuro:20190822235911j:plain

 

広場の東側にある建物が3つの窓の神殿です。3つ並んだ大きな台形の窓が向いているのは夏至の日の出の方角なんだとか。文字さえ持たなかったインカの人々が天文学に長けていたのはなんだか不思議な気がします。伝説ではこの3つの窓から8人の兄弟姉妹が生まれ、その1人がインカ帝国の初代皇帝マンコ・カパックだったとか。イザナギとイザナミが鉾で泥をかき混ぜて日本が出来た!に似た匂いがプンプンします。f:id:greenbirdchuro:20190822235527j:plain

 

ケチュア語で太陽を繋ぎ留める石という意味を持つインティワタナは、石の四隅が東西南北を示していることから日時計であったと考えられています。実は、このインティワナは有名なパワースポット。石の周りでは、神秘の力なるものにあやかりたい人々が、まるで何かの宗教のように一斉に手をかざしています。みんなが口々に「温かい!」 とか「感じる!」とか言うもんだから、わたしも触ってみましたよ。言われてみれば温かいような・・・。こうして、人は壺を買うようになるんだろうな・・・。f:id:greenbirdchuro:20190822235914j:plain

 

限られた斜面を最大限に利用して、効率的に太陽光や水を得るためであったとは言え、きっちりと積まれた石垣の段々畑が上から下まで40段も連なる光景は圧巻です。インカ人の段々畑を造る能力はもはや芸術の域で、日本人も叶わないかもしれません。ここで育てられたジャガイモやトウモロコシ、コカなどの食物は、通年食べらえるように乾燥させてコルカで保管されたそうです。右手には居住区が並んでいます。f:id:greenbirdchuro:20190823000209j:plain

 

居住区の石の積み方でそこに住む人の身分がわかるのが興味深いです。貴族の住居は大きな石を隙間なく積み上げているのに対して、身分の低い者の住居は小さく不揃いの石でできています。段々畑に近いこの辺りの住居の石積みは庶民のものですね。f:id:greenbirdchuro:20190823000212j:plain

 

他のインカの遺跡が直線や曲線で描ける滑らかで規則的なフォルムをしているのに対し、自然の石の上に人工的に石を組み上げて造られたコンドルの神殿はダイナミックで不思議な形をしています。見ようによっては翼を広げたコンドルに見えなくもありません。翼を象った石の部分の半地下になったスペースでミイラが見つかったことから、牢獄であったとも考えられていますが、本当のところはわかっていません。f:id:greenbirdchuro:20190823000350j:plain

 

コンドルの神殿の前に設置されたコンドルの頭部とくちばしを象った大きな平石は、太陽神への生贄を捧げた場所だと考えられています。インカの時代のコンドルは地上と空を結ぶ神のひとつとされていたので、コンドルの神殿(コンドルの平石)が地上と天界を結ぶ神聖な場所として儀式に使われていたことは十分にありえます。インカ帝国の最後の皇帝トゥパク・アルマは、死後にコンドルに生まれ変わったという伝説も残っているそうなので、コンドルが特別な鳥であったことは疑いようもありません。f:id:greenbirdchuro:20190823000511j:plain

ラテン名曲集 コンドルは飛んで行く

ラテン名曲集 コンドルは飛んで行く

  • アーティスト: 101ストリングスオーケストラ
  • 出版社/メーカー: レッドブリッジ
  • 発売日: 2015/08/26
  • メディア: MP3 ダウンロード
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 高さ5mほどのカーブした石壁に囲まれた建物は太陽の神殿です。インカの高い石組み技術がいかんなく発揮された滑らかな曲線はクスコのコリカンチャの土台とそっくりですが、どうやらこの曲線をもった建物はインカ帝国の時代に各地に建てらえた太陽神殿に共通するもののようです。2つある窓のうち、東の窓は冬至の朝、南の窓は夏至の朝に太陽が正確に差し込むといわれています。f:id:greenbirdchuro:20190823000940j:plain

 

正面から見ると、太陽の神殿が自然のままの巨大な岩石を基礎として建っていることがわかります。神殿下部の石室は、基礎となっている巨大な岩石によって斜めに遮られたような三角形をしていて、石組みの中には複数の窪みがしつらえてありました。発見者のハイラム・ビンガムはこの石室を王家の墓だと考え、陵墓と名付けましたが、実際にミイラが見つかったわけではないので、墓であったかどうかも定かではありません。これだけ立派な造りなので、お墓だとしたら王家のものの可能性は高いと思いますが。f:id:greenbirdchuro:20190823000639j:plain

 

マチュ・ピチュ遺跡の中にはアルパカリャマが放し飼いにされていて、すっかり景色に溶け込んでいます。これは、リャマだと思っていますが、正直なところ自信がありません。アルゼンチンやチリで見るグアナコもそっくりですが、つい最近まで3つとも同じ動物で呼び方が違うだけだと思っていたわたしには見分けなんかつくはずもありません。大人しく草を食べているだけで、全くこちらを気にしていなさそうですが、これだけ毎日たくさんの観光客が来るんだからいちいち構っていられないというところでしょうか。f:id:greenbirdchuro:20190823230632j:plain

 

わたしが訪れた頃も入場制限がありましたが、待てばなんとか入れるくらいではありました。現在はかなり厳しくなっていて、予約なしでの入場はまず無理と思った方が良いようです。そんなに厳しく入場制限しているというのに、遺跡の近くに国際空港を造ることが決まって現地は紛糾しているとか。飛行機や列車を乗り継いで苦労して辿り着くからこその感動があると思うので、飛行場が出来たらもう行かないかな、わたしは。f:id:greenbirdchuro:20190823233913j:plain

 

川の濁流を見てこの時期が雨季だったことに気がついたわたしでしたが(知っていたところでペルー行きを諦めるはずもないけど)、マチュ・ピチュからの帰り列車は土砂崩れによる線路の復旧に時間がかかり、1時間半で着くはずのオリャンタイタンボ駅まで7時間もかかりました。インカ・レイルの中で缶詰めになったのも今となっては良い思い出(?)です。日本ではあり得ないことに途中停車した列車から線路上に開放される時間もありました。このままだと暴動でも起こすと思われたのかもしれません。f:id:greenbirdchuro:20190823232413j:plain

 

オリャンタイタンボ駅に着いた時にはもう夜更け、クスコ到着に至っては午前様でした。酸素不足と睡眠不足で脳細胞が死んでいく・・・最後まで持ちこたえるかしら。f:id:greenbirdchuro:20190823232416j:plain

 

マチュピチュ (写真でわかる謎への旅)

マチュピチュ (写真でわかる謎への旅)

 
マチュピチュ探検記 天空都市の謎を解く

マチュピチュ探検記 天空都市の謎を解く

 

 

<