チチカカ湖で暮らすウル族の生活
マチュ・ピチュ遺跡を観光したので、ペルーに来た目的は8割がた達成したのですが、せっかくなのでチチカカ湖に足を延ばしてみることにしました。チチカカ湖はペルー南部とボリビア西部にまたがる大きな淡水湖ですが、見るべき価値のある珍しい湖とされています。何がスゴイかというと標高3800mにあるということ。さらに、世界中で20カ所ほどしか確認されていない古代湖のひとつなんだとか。
クスコからチチカカ湖の側にあるプーノという街までは1時間に1本ほどの割合でバスが出ていましたが、インカ・エクスプレスの運行している観光バスを利用することにしました。クスコを出たバスは1時間ほどでオロペサという聞いたことない名前の小さな村に立ち寄りました。
見るからに何にもなさそうなオロペサ村ですが、この村はペルーのパンの都と呼ばれています。バスの車窓からも道路沿いの窯でパンを焼いている様子が見れました。バスから降りると村の中には美味しそうなパンの香りが漂っています。
オロペサ村の名物がチュタパンです。直径30~50cmくらいはありそうな座布団みたいに平べったいパンです。ほんのりとシナモンの香りがして、素朴な甘みがクセになりそう。実は、チチカカ湖ではこのチュタパンが重要な役割をはたすことになります。
トイレ休憩で立ち寄ったお土産物屋さんには人懐っこいビクーニャがいました。リャマとアルパカとグアナコとビクーニャ・・・ますますわけがわかりません。4つとも近縁であることは確かですが、属分類については色んな学説があるんだとか。とりわけビクーニャとチリ・アルゼンチンにいるグアナコはそっくりです。首の下には長い毛が生えているのがビクーニャなんだとか。
これがアルパカです。手足と首を長くした変わり種の羊といった見た目ですが、羊よりもずっと愛嬌のある顔立ちをしています。アルパカが昔から飼育されてきたのは、羊と同じでその長い毛を利用するためでした。このお土産物屋さんで、アルパカの赤ちゃんの毛でできたマフラーを1つ購入しました。アルパカの赤ちゃんの毛でできた製品は、大人のアルパカのそれよりもさらに柔らかくて、ふわふわしていました。
クスコとプーノの境界までやってきました。標高は富士山よりはるかに高い4335m。クスコにしばらく滞在していて高地順応ができていたようで、4000mを超えていても息苦しさを感じません。理論的には理解していましたが、スポーツ選手でもないわたしがたった数日でこの空気の薄さに慣れてしまうんだから、陸上選手の高地トレーニングにはバカにできない効果があるんだな・・・と実感しました。
オロペサから2時間半で今回の旅行で最も標高の高いラヤ峠に到着です。4338m!
あいにくの曇りですが、晴れていたら、青空と緑の大地と冠雪したアンデス山脈が見れて、かなりの絶景だったはず!
何にもないラヤ峠ですが、観光客目当ての露店が並んでいて、アルパカの毛で作られたマフラーやストールや民芸品等々が売られていました。それにしても、インディヘナの皆さんは商根逞しい・・・。ラヤ峠どころか周辺にも住居らしきものを見かけませんが、こんなところまでどこからやってきてるんでしょうか。他に見るものがあるわけでもないので、バスから降りた人はみんな土産物屋に立ち寄りますが、買い物をしている人はあまり見かけませんでした。商売になるんだろうか・・・。
ラヤ峠から3時間ほどで標高3850mに位置するチチカカ湖観光のゲートシティプーノが見えてきました。これから訪れるチチカカ湖周辺はインカの時代以前から文明の栄えた地域でしたが、プーノ自体は、スペイン人の征服より後の1668年に造られた街で、現在は約22万人が暮らしています。市街地には立ち寄らずに桟橋に向かいます。
チチカカ湖の西岸にある桟橋につきました。対岸にはプーノの市街地が見えています。アヒルのボートが停泊している風景は、その辺の公園の池と大差なく見えて、湖の広さも標高の高さも伝わりませんが、チチカカ湖は、汽船が航行する湖としては世界最高所となる標高3810mに位置しています。ペルーとボリビアの国境にまたがる湖の面積は約8500㎢。数字を聞いてもピンときませんが琵琶湖の約12倍の規模です。富士山の山頂よりも高い場所にこれだけの規模の湖があるというのは、日本人には想像できないくらいのスケールの大きさですが、さらにスゴイのは、一般的な湖が数千年から数万年の寿命であるのに対し、チチカカ湖は10万年以上の歴史をもつ古代湖であるということです。何から何までスケールが大きい!
ここからモーターボートに乗ってチチカカ湖に浮かぶ島を訪れます。湖には大小40以上もの島がありますが、ペルー側の島の有名どころと言えば、ウロス島・アマンタニ島・タキーレ島。その中でも観光客が最も多く訪れるというウロス島を目指して、ボートはチチカカ湖に漕ぎ出していきました。
青空の下、ボートは青い湖を進んでいきます。標高が高いせいでしょうか、空がとても近く感じます。所々にトトラという葦のような水生植物が生えています。
湖の中には家畜が飼われている島もありました。絶対に逃げられないから安心ですね。
30分ほどでウロス島が見えてきました。実は、ウロス島は普通の島とはだいぶ違った特徴があります。なんと、ウロス島とはチチカカ湖に散在する数十の島の総称で、それらの島々はトトラと呼ばれる葦を積み重ねてできた人工の浮島なんだそうです。島全体を見渡してみると、島自体はもちろんのこと家も舟もすべてトトラで作られているのがわかります。
島に暮らすウル族という先住民の人々が出迎えてくれました。船みたいに浮遊しているのかと思っていたら、トトラでできた島の地面は思ったより硬くて浮遊感はありません。それでも、植物特有の柔らかな感触がなんとも不思議な感じです。
出迎えてくれたウル族の人々が身に着けている伝統的な民族衣装が、かなりカラフルで青空と青い湖の中でとても映えています。ごくシンプルな衣装の男性に対し、女性はフワッと広がった原色のスカートを身に着けています。どうやらデザインや色に年齢は関係なさそう。小さめの帽子の下の髪型もみんなお揃いの三つ編みです。
集会所になっている島の中心部の広場で、ウロス島の成り立ちについての説明がありました。ウロス島の作り方は、わたしが想像していたよりもずっと簡単で、トトラの根をまとめて縄で縛って作った土台の上にトトラの葉を切って3mほど積むだけなんだとか。わたしの訪れたウロス島はせいぜい2~3家族が住んでいるような小さな規模でしたが、チチカカ湖の中に何十とあるウロス島の中には数百人が暮らす大きなものもあり、そこには学校や教会なんかもあるそうです。
人々の食料となるのは、チチカカ湖に生息する魚や水鳥、トトラで育てた野菜など。驚いたのは、火種にもなる上に食料にもなるというトトラの優れもの加減です。
チチカカ湖で捕れた魚は重要なタンパク源。
調理したものを見せてもらいました。肉じゃがの魚版「魚じゃが」といった感じでしょうか。ちなみに薄めの塩味でした。
シンプルな生活をしているように見えるウル族ですが、子供たちの「お菓子くれ」のおねだり攻撃は半端ありません。世界中から観光客が来るので、どこかのタイミングで甘いお菓子の存在を知ってしまったんでしょうが、それが深刻な問題になっているんだとか。確かに、虫歯になっても生活習慣病になっても島には歯医者さんもお医者さんもいません。ツアー会社からは、飴やお菓子の代わりに、パンやフルーツを渡すように推奨されていました。それなら島のみんなで食べられるからです。そこで、活躍するのがオロペサ村で買ったチュタパンというわけです。でもお菓子を期待して一生懸命に接待していた子供たちにとってはショックが大きいようで、お菓子を求めて激しく泣き叫んだ上に、お菓子の代わりにお金をくれとねだられる始末・・・、なんだかやるせない気持ちになります。
トトラで作られたバルサという船でチチカカ湖遊覧体験できます。(もちろん有料ですけどね)。トトラだけでよくもこんな頑丈な船が出来るもんだなと感心しきりです。
チチカカ湖観光を終えて、プーノに宿泊です。
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