時たま、旅人

自称世界遺産ハンターが行く!旅好き会社員の備忘録

死海とヨルダン・イスラエル国境超え

次の目的地はペトラのはずでしたが、ペトラに向かうハイウェイは相変わらず不通のままだし、雪に埋もれたアンマンに戻っても仕方ないので、目的地を変更して死海に向かうことにしました。死海近辺に積雪がないのはネボ山からも確認済みだし、死海を眺めながら旅程を立て直してこの旅を仕切り直したいと考えたからです。

 

ネボ山から死海のほとりのリゾートホテルに向かう道沿いにロマ民族らしき人々の姿がありました。あんまりジロジロと見てはいけないと思いつつも、荒野のど真ん中に身を寄せ合うように張られた粗末なテントで流浪の民がどんな暮らしをしているのかは興味があります。この生活を選ばざるを得なかったのかあえて選んだのかわかりませんが、学校に通っていてもおかしくない年格好の子供の姿もありました。f:id:greenbirdchuro:20190727103853j:image

 

30分ほどで死海に到着。子供向け科学雑誌で読んだ世界七不思議のひとつを目の前にしたらどれだけ感動するだろうか・・・と思っていましたが、見た目は、ごくごく普通の湖で、塩分濃度が30%もあるようには見えません。それどころか、湖畔には観光客が寛ぐためのロッキングチェアやパラソルまで並んでいました。リゾートホテルに泊まっているお前が言うなというご意見はあるかもしれませんが、完全にリゾート地化した秘境感ゼロの死海に軽く失望したことは言うまでもありません。f:id:greenbirdchuro:20190728235129j:plainf:id:greenbirdchuro:20190728235135j:plain

 

悲鳴をあげながら水の中に入っていった観光客も、一通りの浮遊体験を終えるとアッと言う間にいなくなっていきます。死海周辺が暖かいとは言いながらも、すぐ近くで数十年ぶりの大雪が降った直後なので泳ぐには寒すぎたようです。それに優雅に読書できるほど波穏やかでもありませんでした。泳がなかった代わりに死海の水を舐めてみたら、塩辛いというよりも強い苦味を感じました。にがりの素である塩化マグネシウムが多量に含まれているようです。そう言えば、イッテQで死海の水で豆腐を作る企画をやったことがありましたよね。f:id:greenbirdchuro:20190728235143j:plain

 

夕陽が沈む様子はまるで海を見てるようです。なぜこんなところに死海が生まれたのか・・・。実はこの場所は白亜紀以前には海だったと考えられています。海底隆起によってパレスチナ付近が高原になった一方で、この場所には生まれた断層は海から取り残された湖になりました。気温が高い上に年間降水量が極端に少ないという気象条件下では、湖水の蒸発が速く、唯一の水源であるヨルダン川からの供給が追いついていきませんでした。こうして、海水の10倍の塩分濃度の死海が出来上がっていったのです。f:id:greenbirdchuro:20190728235153j:plain

 

リゾートホテルらしく、死海の泥を使った美容関連商品もたくさん揃っていましたし、スパも充実していました。文句を言いながらもリゾート気分を味わったわけです。

 

翌朝の死海です。朝靄のかかった死海はとても神秘的でした。対岸に見えているイスラエルが蜃気楼のようです。死海を見ながら旅程を練り直した結果、ペトラまでのハイウェイがいつ開通するかわからないので(もしかしたら今回は行けない可能性もあるので)、ヨルダンを一旦離れてエルサレムに向かうことにしました。f:id:greenbirdchuro:20190728235158j:plain

 

タクシーで国境に向かう途中には、だいぶ朝靄も晴れてきて、対岸のイスラエルの姿がハッキリと見えてきました。f:id:greenbirdchuro:20190728235214j:plain

 

最寄りの国境は死海のすぐ北を流れるヨルダン川にかかるキングフセインにありました。これはあくまでもヨルダン側の呼び名で、同じ橋をイスラエルの人はアレンビー橋と呼び、その他のアラブ人はアル・カラマー橋と呼ぶんだとか。橋の手前4kmくらいの場所にヨルダンの出入国審査場がありました。ヨルダンからイスラエルへの国境越えは、世界で最も出入国審査が厳しい国境の1つと言われています。中東エリアの複雑に絡み合った宗教とそれに伴う歴史や政治を思えば仕方ありませんが、旅人にとって最大の難所であることに違いありません。

 

まずは、ヨルダン側国境で出国審査。親日国家ヨルダンだけあって審査官はとてもフレンドリー。でも、その笑顔に油断して最初のミッションを怠ってはなりません!それは、審査官に「ノースタンププリーズ」とお願いしてパスポートへの出国スタンプを阻止すること。というのも、パスポートにイスラエル出入国のスタンプを押されてしまうと、イスラエルと敵対関係にあるアラブ諸国へ入国することができなくなってしまうからです。イスラエルでどんなに頑張ってスタンプを防いだとしても、ここでヨルダン出国のスタンプを捺されてしまうと漏れなくイスラエル入国がバレてしまうことになります。ヨルダンの審査官も慣れているので、よっぽど意地悪な人かポーっとした人に当たらなければ不用意にパスポートにスタンプを押されたりしないようですが、念のため伝えておくのがベターでしょう。

 

パスポートとともに「名前・出身国・パスポートNo.」を記入した指定の用紙を提出して出国税を支払えば、無事にヨルダン出国。パスポートにスタンプを捺される代わりに出国スタンプが押された「別紙」を貰うことができました。出国事務所の前で待っていたバスに乗ってイスラエル側国境に向かいます(バス乗り場でチケットが買えます。)10分ほど走って一時停止したバスに乗り込んできた審査官らしき人が先ほど貰ったばかりの「別紙」を回収していきました。f:id:greenbirdchuro:20190728235444j:plain

 

バスが緩衝地帯を進んでいると道沿いに監視台がありました。誰もいない監視台もありますが、それでもなんだか緊張してしまいます。f:id:greenbirdchuro:20190728235453j:plain

 

両国境の間は、5kmほどしか離れていませんが、国境が開いている時間が限られているせいか緩衝地帯は渋滞気味です。バスがキングフセイン橋を渡っている時に、橋の欄干に「JAPAN」と書かれたプレートを見つけました。なんと、この橋は日本のODAの援助で建設されたんだそうです。ODAに免じて国境で手加減してくれたらいいのに・・・。f:id:greenbirdchuro:20190728235457j:plain

 

更に荒野の中の緩衝地帯を進みます。ヨルダン側国境を出て 小一時間ほどで境界線の西側約1kmの地点にあるイスラエル側の国境に到着しました。f:id:greenbirdchuro:20190728235505j:plain

 

予想通り、イスラエル側の国境には入国審査を待つ人々の長い列ができていました。スーツケースを荷物窓口に預けて、割り込みと戦いながら、その長い列に並びました。まずはセキュリティチェックからです。空港等でもお馴染みの手荷物検査と身体検査ですが、爆弾でも探しているかのように1人ずつ念入りに検査されます。時として何も考えてなさそうと言われるくらい平和な顔つきのわたしは、金属性のアクセサリーや精密機器とも縁がないので、ここは難なくクリアしました。

 

そして、いよいよ今回のクライマックスとなる審査官との戦いです。入国審査はパレスチナ人用とその他外国人用に分かれていました。(イスラエル人はこの出入国審査場を通ることができません。)少しでも心証を良くしようとハローと声をかけてみましたが、入国審査官の表情はピクリともしません。そして、矢継ぎ早に質問が飛んできます。内容は他の国の入国審査でも聞かれるような一般的なものが大半でしたが、1つ1つは大したことなくても根掘り葉掘り聞かれると、なんか、わたしって歓迎されてないみたい・・・と萎縮してきてしまいます。最後の質問が終わるや否や審査官はわたしのパスポートを持ってどこかへ行ってしまいました。大人しく待つこと約30分。戻ってきた審査官は、ここで初めての笑顔を見せながら、パスポートと同じ写真がついた入国カードを渡してくれました。どうやら放置されてる間にこれを作ってたようです。f:id:greenbirdchuro:20190801184000j:image

 

思ったより楽勝でしたが、それでも2時間は経過していました。ちなみに、イスラエルと国交がない国への入国履歴があったり、パレスチナへ行く予定があったり、イスラエルでの滞在先が決まってない場合は、さらなる質問攻めにあったり、拘束されて入国拒否されることもあるそうです。わたしがいる間にも別室に呼ばれていく外国人を何人も見ましたから。わたしの勝因は、「パレスチナへ行く予定がない」と答えたことでしょうか。行かないわけないんですが、予定ごときで拘束されたらたまりませんから。

 

この入国審査の後も、なんのためかわからないパスポートチェックがありましたが、預けたスーツケースを無事にピックアップすることができました。出口の両替所でイスラエルシュケルを入手し、再びバスでエルサレムに向かいました。約1時間のドライブで周囲を塀に囲まれたエルサレムの街が見えてきました。f:id:greenbirdchuro:20190728235515j:plain

 

モスクのミナレットかと思いましたが、旧市街の丘の上にそびえている塔は聖墳墓教会の鐘楼のようです。

f:id:greenbirdchuro:20190728235523j:plain

 

エルサレムのシンボルとも言える黄金色の岩のドームも見えてきました。ここからも市街地のあちこちにミナレットが立っているのがわかります。f:id:greenbirdchuro:20190728235529j:plain

 

いよいよ世界三大一神教の聖地が集中している神秘の街エルサレム観光の始まりです。

 

 

 

<