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死ぬまでに行きたい世界の図書館 (ビクトリア州立図書館)

メルボルンには、2015年に「死ぬまでに行きたい世界の図書館」に選出された美しい図書館があります。

死ぬまでに行きたい世界の図書館 (サクラムック)

死ぬまでに行きたい世界の図書館 (サクラムック)

 

 

ビクトリア州立図書館は、メルボルン・セントラル駅の目の前、スワンストン通り・ラトローブ通り・ラッセル通り・リトルロンズデール通りの4本の通りに囲まれた1ブロック四方の敷地にありました。かつて鉄製のフェンスと門が設けられていた前庭は、1939年に一般に開放されるようになりました。芝生の上には公園さながらに腰かけたり寝転がったりして思い思いに過ごしているメルボリアンの姿がありました。f:id:greenbirdchuro:20190719193049j:plain

 

ギリシア神殿のような柱が並ぶネオクラシック様式の華麗な建物は、ジョセフ・リードの設計によるものです。このオーストラリア初の図書館が完成したのはビクトリア植民地の出来た3年後の1854年でした。ゴールドラッシュに沸くメルボルン市民に文化と教養を与えるために優れた公共図書館を設立したいという強い熱意でこの図書館の創設に尽力した人物が、建物正面の銅像の人物レドモンド・バリーです。図書館設立準備会の会長に任命された法律家の彼もまたアイルランドからの移民でした。f:id:greenbirdchuro:20190719193055j:plain

 

図書館の前では地面に描かれた大きなチェス盤で熱戦が繰り広げられていました。公園や広場で見知らぬ相手とチェスをするシーンは、海外ドラマや映画のシーンでよく目にしますが、メルボルンでも確立された文化のようです。その証拠に、図書館の中のChess Reading Roomという多目的ホールはチェスに特化した幅広い資料が収めらているだけでなくて、実際にゲームが出来るようになっています。それにしても、よっぽどの自信がないとこんなスタイルでの対戦は難しいように思います。実力もわからない見知らぬ相手と戦うなんて、雀荘への飛び込みマージャンかはたまた道場破りかといった感覚なんでしょうか。f:id:greenbirdchuro:20190719195234j:plain

 

正面の入り口は簡易なセキュリティゲートだけで、受付などもないので、何の手続きも要らず気軽に入館することができました。1人掛けの机がずらりと並ぶ2階の学習スペースを抜けて、この図書館最大の見所である3階のLa Trobe Reading Roomを眺めるために6階に上がりました。

 

La Trobe Reading Roomを最上階(6階)のバルコニーからの眺めたのがこちらの写真です。4~6階が吹き抜けになった開放感のハンパない空間です。八角形のフロアには、中心から八方向に向かって放射状に学習机が配置されています。机や床などがオレンジ色に近い暖色系でまとめられていて、フロア全体がまるで満開に咲いたコスモスかひまわりを見ているようで、思わずうっとり・・・。フロアを取り囲む壁にずらりとディスプレイされた書籍がこの図書館の歴史を物語っているようです。f:id:greenbirdchuro:20190719193103j:plainf:id:greenbirdchuro:20190720182146j:plain

 

天井を見上げて、この部屋がThe Domeと呼ばれる理由が理解できました。中央は八角形のドームになっていて、それを取り囲むようむ明かりとりの天窓がフロアと同じように放射状に配置されています。天井から射し込む優しい自然光と白亜の壁が最適な明るさの学習環境を作り出しています。f:id:greenbirdchuro:20190719193113j:plain

 

すべてが最高のものを揃えることで、文学と科学、芸術に関する学びと哲学の中心地となるようにという壮大なビジョンを持って設立された図書館だけあって、単なる書籍や本といったレベルをはるかに超えた所蔵品が多数ありました。La Trobe Reading Roomを囲むバルコニーは、こうした貴重な所蔵品を展示するギャラリーとなっています。

 

その1つが、オーストラリアの盗賊ネッド・ケリーの甲冑です。ネッドは強盗を働く際にこ頭部全体を包むような円筒のヘルメットと体の各所を守る甲冑を身につけていました。まるで兵士が身につけるような立派なものです。ネッドの甲冑が展示されているのは、彼が稀代の犯罪だからというだけではありません。その生涯が幾度となく小説や映画になり、勇敢である様を「ケリーのように」と表現することからも、この国で彼が高く評価された人気者であることがうかがえます。f:id:greenbirdchuro:20190719193121j:plainなぜ、犯罪者がそれほどまでに人気者なのか?それには、彼の犯罪ポリシーが関係していました。犯罪者一家に生まれたため、その道のデビューも早かったネッドは、警察官によるでっち上げ事件の犯人にされたことをキッカケに権力に反抗するようになっていきました。決して貧しいものからは略奪せず、彼らのために銀行から債務証書を持ち出して焼却したり、奪ったものをわけ与えたりもしました。富裕層からは恐怖の対象として見られたこの甲冑が、貧しい民衆にとっては敬慕の対象だったそうです。最終的には、彼のみせた優しさが仇となって逮捕されてしまい、死刑判決を下されてしまいますが、80,000人分に及ぶ助命嘆願書が集まったそうです。ネッドに死刑判決を下した裁判官はこの図書館の正面にある銅像の人物レドモンド・バリーでした。法廷で対峙した裁判官と犯罪者の2人がどちらもメルボルンの人々にとって英雄であったという事実に、言いようのない因果を感じてしまいます。

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ケリー・ギャングの真実の歴史

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ギャラリースペースは想像以上に広々としていて、多くの美術作品が展示されていました。面白いというだけで思わず撮ってしまった作品もあり、作者やテーマをチェックするのを失念してしまいました。f:id:greenbirdchuro:20190720182426j:plain

オーストラリアの作家兼イラストレータであるロバート・イングペンのThe Keyです。いかにも児童文学の不思議な世界への鍵って感じがしています。f:id:greenbirdchuro:20190719195015j:plain

 

本屋やカフェなどが併設されていたり、無料の高速フリーwifiが使えたり、他にも読書や学習だけでなく様々な用途で使える図書館。こんな素晴らしい施設が無料で利用できるなんて、メルボルンの人々が羨ましい・・・。この街が「世界で最も住みやすい都市」に選ばれている理由がなんとなく分かったような気がしました。

 

ビクトリア州立図書館(https://www.slv.vic.gov.au/

(月-木)10:00~21:00・(金-日)10:00〜18:00

 

21世紀ガイド図鑑 世界の図書館

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