ルーズベルトタワーとキャニオンカントリー
黄葉が見れることを期待して、ブラックテイル・プラトー・ドライブというダートロードを走りたかったのですが、雪で閉鎖されていたのでグランドループで次の目的地に向かいました。
30分ほどでルーズベルトカントリーに到着。やたらと何でもかんでも「ルーズベルト〜」と呼ばれるエリアですが、セオドア・ルーズベルト第26代大統領に因んで名付けられたものです。多くのスポーツの中でもとりわけアウトドアスポーツにご執心だった大統領は、この辺りでキャンプを楽しんだそうです。
北ゲートもルーズベルトアーチと呼ばれているので、元大統領が訪れたのも1回や2回ではなさそうです。キャンプサイトのそばには1920年築のルーズベルト・ビレッジ・ロッジがありました。ビレッジ自体が既に冬季シーズンに入っていて、丸太小屋風のロッジも閉鎖されていました。人気のない小規模なビレッジをぐるっと車で一周してサクッと通り過ぎます。
ビレッジを過ぎてすぐのグランドループ上でバイソン(アメリカン・バッファロー)に遭遇しました。近くで見ると想像以上に大きいです。筋肉で盛り上がった肩のあたりが長い毛で被われているので、頭でっかちに見えて正面からの迫力がすごい。わたしの乗ったコンパクトカーなんか一突きでペチャンコにされそうです。彼らのせいで何度も渋滞を経験する羽目になり「君たちはもういいよ」と言いたくなるバイソンですが、野生の個体群が生息しているのはイエローストーン国立公園とノースウェスト準州のウッド・バッファロー国立公園だけなんだそうです。「もういい」なんて言ってごめんなさい。
タワー滝は、ルーズベルトカントリーから車で約5分の駐車場からトレイルを数分ほど歩いた展望台から見れます。立派な売店とお土産屋さんがある駐車場なので見逃す心配はありません。木に隠れていて滝全体が見えませんが、40mの高さから滝つぼに勢いよく落ちる様子がとても印象的な「滝らしい滝」です。
40mの滝をタワー滝と呼ぶのはちょっと大げさに感じていましたが、ここに来て、名前の由来は滝そのものではなくて、滝の上にそびえる尖塔のような岩だとわかりました。火山岩にできた裂け目から岩の柔らかい部分が浸食され、硬い部分だけが残ってこんな奇岩を作り上げたようです。次に見る時はさらに進んだ浸食でまた違った姿になっているのかもしれません。
タワー滝が流れ込むタワー川は、イエローストーン川に合流します。
タワー滝の滝壺まで下りてみたかったのですが、ここのトレイルも雪で閉鎖中でした。グランドループをキャニオンカントリーに向って南下します。
キャニオンカントリーの北側にあるデビルズ・デンの道路沿い。岩肌にスカートのプリーツやアコーディオンの蛇腹を思わせる細かい襞が入っています。
こちらは大きめのプリーツです。この岩肌の秘密を知りたくて車を止めてみたのですが、何の情報も得られませんでした。せめて呼び方を知りたかった・・・。
岩の謎は解けなかったかわりに、ビックホーンシープの群れに出会うことができました。オスの立派な角が見たかったのに角が小さいメスや子供ばかり・・・。ふだんはオスだけの群れとメスと子どもだけの群れに別れて生活しするビックホーン。オスとメスが一緒にいるのは繁殖期だけなんだとか。この時期のオスは集団でメスをめぐる激しい闘いの最中だそうです。殺気だったオスに出会わなくて良かったのかも。
ビッグホーンに出会った場所は、地層マニアにはたまらないビューポイントでした。崖の上部の細かな垂直ラインが入ったように見える地層は約5000万年前の噴火で積もった火山岩、手前の渓谷の塔が連なったように見える地層は100万年以上前に噴火で流れでた溶岩が固まった玄武岩が氷河によって削られたものだそうです。渓谷の崖の表面には火山の熱で温められて液化した硫黄や石油が染み出て、黄色や白に色づいています。川や木々の色とのコントラストが鮮やかです。
キャニオンカントリー突入直前の雪景色に嫌な予感が。
キャニオンカントリーは東西に流れるイエローストーン川を挟んでサウスリムとノースリムに分かれています。その両方に点在する展望台やトレイルから大渓谷とそこに流れ落ちる2つの大きな滝の景観を楽しむことができます。
ところが・・・、悪い予感は敵中するもので、積雪のためサウスリムは閉鎖。したがって、予定していたアンクルトムズ・トレイルのトレッキングは自動的に中止です。今回はノースリムだけということになりました。まあ、あの雪景色を見た時には薄々そんな気がしていましたけどね。
この大渓谷には美しい景観のアッパー滝と落差が約100mもある壮大なロウワー滝の2つの滝があります。まず、グランドループにあるサウスリムとノースリムの中間地点にある駐車場に車を止め、すぐ先にあるアッパー滝に向かいました。
Brink of Upper Fall からみたアッパー滝です。展望台は滝のすぐ真上にありました。落差は33mとそれほど大きくないものの、水量が多いのでそれなりの迫力です。滝壺を覗くと吸い込まれそうになります。
アッパー滝の下流です。雪解け水もこの川の流れに加勢しているようです。
ノースリムを150mほど進んだ駐車場からBrink of Lower fallのトレイルを降りていくとロウアー滝のすぐ目の前の展望台へ出ました。落差94mは文句なしの大迫力です。怖いけど目が離せない・・・。ロウアー滝の下流は両側を囲む絶壁の左手(北側)がノースリムで、右手(南側)がサウスリムです。滝の水しぶきがスゴイですが、川を囲む渓谷の静かな迫力と美しさも激しく流れる滝の迫力に負けていません。
振り返ると遠くにアッパー滝が見えています。
次はルックアウトポイントから見たロウアー滝の全景です。落差が大きくなると滝壺は煙ったように霞んでしまうものですが、完璧なフォルムです。近くで見るのとはまた違った迫力・魅力があります。
ルックアウトポイントから見た下流の景色。色々なビューポイントから渓谷を眺めてみましたが、見る場所によって色合いが変わり、違った表情を見せてくれます。
最後は迫りくる大渓谷を堪能できるグランドビューポイント。国立公園の名前はこの黄色の大渓谷に由来しています。硫黄の黄色だけでなく、酸化鉄や流紋岩や火山岩が混ざりあい、不思議な色合いを醸し出しています。渓谷の複雑な色合いと周囲の自然とのコントラストが美しくて、まるで油絵の風景画の中に入り込んだ気分です。
グランドビューポイントにあった「THE GRAND CANYON OF THE YELLOWSTONE」の看板。幅400~1200m・深さ240~370m・長さ38kmという規模はこの呼び名に相応しいか相応しくないかと言えば十二分に相応しい!〇〇富士とか〇〇のマチュピチュという呼び方は二番手以下とか二番煎じみたいなニュアンスを感じるのであまり好きではありませんが、この場所では、雄大であること以上に渓谷の色彩が大事だと思うので、この表現でもゆるす!という感じです。
この日からは公園内のオールドフェイスフルにあるロッジに宿泊です。雪のせいで直前にキャンセルした人がいたようで、本当にギリギリで空室が出ました。
ロッジのカフェテリアでの夕食はバイソンのミートローフでした。ステーキみたいなシンプルな調理法だと肉の硬さや生臭さが気になるかもしれませんが、ミートローフはごく普通。付け合わせが全て炭水化物なのがアメリカらしいです。ミートローフはレギュラーとスモールがあると言われたので、実物を見せてほしいとお願いしたら同じものを見せられました。なんだ、わたしは大人だからレギュラーかな・・・と深く考えずにオーダーしたらスモールはミートローフ1つ、レギュラーは2つだったようで、ミートローフがホットケーキみたいに重ねられて出てきました。誤解を解くほどの語学力も返品するほどのハートの強さも持ち合わせていない場合は自分の胃袋のキャパシティを信じるしかありません。疑問に思ったことを適当にしておくとこんな目にあうわけです。
イエローストーン国立公園の中は携帯電話も通じませんが、せっかくなので日頃のあれやこれやを忘れて、どっぷりと自然に浸かってみようと思っています。
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