時たま、旅人

自称世界遺産ハンターが行く!旅好き会社員の備忘録

ヘイデンバレーからウエストサムに見る多彩な景色

 

わたしがロッジから外に出たのは早朝というにもまだ早い時間で、周囲は真っ暗でした。周囲に点在するロッジの人々をなるべく起こさないように夜逃げみたいに静かに出発しました。こんな時間に活動しているのは、決して時差ボケのせいではなくて、これから訪れる場所で夜行性の動物たちに出会えるチャンスを期待したからです。早朝の方が人が少なくてゆっくり出来るし。

 

オールドフェイスフルから反時計回りでイエローストーン湖沿いをフィッシングブリッジに向かいました。フィッシングブリッジにはビジターセンターがありますが、開いている時間でもないのでそのままヘイデンバレーに向けて北上します。f:id:greenbirdchuro:20190704204933j:image

 

早速、エルクを発見!!フィッシングブリッジからヘイデンバレーに向かうグランドループ沿いの林の中にいました。マンモスカントリーでもたくさん見たけど、あっちのエルクは人馴れし過ぎていたので、わたしを警戒する姿に野性を感じてテンションがあがります。目を凝らすと他にも数頭のエルクの姿がありました。f:id:greenbirdchuro:20190629131743j:image

 

ヘイデンバレーに着いたのはようやく夜が明けようとする頃でした。ヘイデンバレーはイエローストーン湖からキャニオンに向かって流れるイエローストーン川が蛇行して緩やかになった大草原地帯で、餌を求めて多くの動物たちが集まってくることで知られています。昼間は観光客の車で大渋滞になることも多いようですが、この時間ならまだ誰もいないのでこのパノラマを独り占め!雪化粧した平原もなかなか趣があります。でも、この時の気温はマイナス10度。独り占め出来るわけですよ・・・。
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遠いけど、魚を狙って集まってきたペリカン水鳥の姿が見えます。
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写真には写らないくらいの点でしか見えないけどバイソンも見れました。f:id:greenbirdchuro:20190704222720j:plain

2匹で戯れる様子がかわいいのはキツネではなくてコヨーテでした。f:id:greenbirdchuro:20190629131718j:image

 

ヘイデンバレーの南にあるマッドボルケーノにやってくると、鼻をつく硫黄の匂いが駐車場まで漂っていました。ここでは泥がまじって熱水が噴き出してくる熱水泉「マッドポット」が集まってできた不思議な景色が見れます。f:id:greenbirdchuro:20190704224026j:plain

トレイルに沿って歩くとマッドポットの噴気孔から泥がぼこぼこと沸騰していながら噴出しているのが見えます。カラフルな泥が噴出する光景はとても不思議で目が離せなくなります。熱水に溶け込んだ鉱物の種類によって色が変わるんだそうで、なんだか化学の勉強をしている気分。
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大きさ約10mのマッドボルケーノから泥が噴き出す時に出るボコボコという音がなんとも不気味です。
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ブラック・ドラゴンズ・カルデロンは泥沼といった感じ。1948年頃に出現し、現在まで60mほど南へ移動しています。おそらく隣にあるサワー・レイクから引っ越してきた熱水泉だと考えられています。f:id:greenbirdchuro:20190705094154j:plain

駐車場近くにあったドラゴンズ・マウス・スプリング。ドラゴンの口とはうまいこと言ったもので、空洞の中にある10mに満たない噴出孔から噴き出すガスや熱水の音が反響してゴーゴーと大きな音を立てています。蒸気が昇る様子もドラゴンが気を吐いているという感じに見えなくもありません。f:id:greenbirdchuro:20190704223646j:plain

 

 

給油のためにフィッシングブリッジビジターセンターに立ち寄りました。ところがビレッジ全体が既に冬季休業に入っている模様でガソリンスタンドは無人閑散どころか人っ子ひとり見当たりません。まだ時間が早いのかも・・・としばらく待ってみましたが、誰もやってくる気配がありません。仕方なく渡米後初のクレジットカードによる給油を試みました。カードを読み取りながらもどうしても決済直前でエラーが出ます。大手3社のカードとも全滅。どうやら米国内で発行されたカードしか使えない?!ガス欠マークが出てからだいぶ走っているのに、一番近い有人ガソリンスタンドまでは40kmはあります。途中でガス欠からのエンストは間違いなし!保険には入っているけど、ロードサービスとわたしの凍死のどちらが早いか・・・そもそもこんなとこまできてくれるのか・・・。これは、困った。

仕方ないので、道路に出てヒッチハイクよろしく他の車両が通るのを待つことにしました。女1人なのに危ないとか言ってられません。ここにいたらどうせ凍死するわけですから。凍てつく氷点下10度の中、わたしもここまでかと覚悟しかけた時、工事用トラックを運転したお兄さんが停まってくれました!!事情を説明し、現金を渡すからお兄さんのカードで20ドル分の給油をしてもらえないかとお願いしてみました。ダメって言われたら伝家の宝刀「女の涙」を出すしかないなと思っていたけど、快く了解。しかも、20ドル分以上の給油をしてくれたのに20ドルしかお金を受け取ろうとしません。わたしが鶴なら今晩お伺いしますのに・・・と思いながら命の恩人の乗ったトラックの姿が見えなくなるまで見送ったのは言うまでもありません。

  

再び走り始めたグランドループ沿いから眺めたイエローストーンです。大昔に噴火した火山の火口に水がたまってできた湖で、面積は琵琶湖の半分くらいのですが、山岳部としてはアメリカ最大規模。噴火の規模の大きさを想像するだけでゾッとします。湖面の海抜が2357mもあるので、遠くにうっすらと見える4000m前後ティトン山脈すら小高い程度にしか感じません。f:id:greenbirdchuro:20190704225049j:plain

 

公園の南ゲートに近い場所にあるエストサムにやってきました。手のひらのような形をしたイエローストーン湖を北から見た時に親指(thumb)にあたる場所だからウエストサムとかなんともユニークな名付けです。ここは、湖を望む位置に温泉が湧いているので、温泉と湖が同時に眺められる公園内で唯一の場所です。f:id:greenbirdchuro:20190704225151j:plain

車いすでもまわれるような緩やかなトレイルは外側と内側のトレイルを合わせても1周1kmちょっとで、ゆっくり巡っても30-40分程度でした。

まずは、白泥の温泉が景色とつくるコントラストが美しいThumb paint potf:id:greenbirdchuro:20190704225458j:plain

Surging Springf:id:greenbirdchuro:20190704225608j:plain

Ledge Springf:id:greenbirdchuro:20190704225659j:plain

Collapsing Poolf:id:greenbirdchuro:20190704225828j:plain

Thumbs' Gyserf:id:greenbirdchuro:20190629131734j:image

アビス・プール( Abyss Spring)のAbyssには「深淵・底知れない深い穴」といった意味があります。確かに16mはかなり深いですが、深淵という言葉の持つ暗いイメージには合わない気もしました。でも、カリブ海のような青く澄んだプールを眺めていると危険だとわかっていても入ってみたい衝動に駆られてくるので、深さだけでなく人を惹きつけてしまう魔性っぽいところに「深淵」を見た気がします。
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現在は美しい青色のブラックプール、かつては黒かったそうです。熱水の温度が急に上がってバクテリアが死滅してしまったためにこんな風に色が変化してしまったとか。蒸気が邪魔していますが、ブラックプールのむこうにイエローストーン湖が広がっています。
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エストサムから湖に向かって温泉が流れ込んでいました。バクテリアの醸し出すオレンジ色と青い湖のコントラストが美しいです。こんなに温泉が流れ込んでいたら湖は温かいんじゃないかと思ってしまいますが、夏でも12度くらいまでしか水温が上がらないので、泳ぎには適していないそうです。f:id:greenbirdchuro:20190704230007j:plainf:id:greenbirdchuro:20190629131738j:image

湖に沿って突き出すようにコーンと呼ばれる噴出孔がいくつも並んでいます。こんなコーンが湖底にもいくつも見つかっていて、湖の中に流れ込む温泉の量は毎日11,733リットルにもなるそうです。泳げるほどではないといってもウエストサムのある湾は他の場所より水温が高いので、冬場でも凍結するのは最後の方なんだとか。
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こちらはビックコーン。近年は水位が上がり水没してしまって見えないこともあるコーン。雪解け水で水没しているかも・・・と恐れていたけど、時間帯が良かったのか全部バッチリ見れました。f:id:greenbirdchuro:20190705112306j:plain

レイクショアコーンハート型に見えます。レイクショア(湖沿い)だなんてありきたりな名前は変えてしまって、これを見ると幸せになるとかなんとか言えば絶対に名所になると思います。f:id:greenbirdchuro:20190705112503j:plain

一番有名なのはフィッシングコーン。釣り人がうっかり魚を落として煮魚ができちゃったことから、ここで釣った魚を調理する人が後を絶たなくなって名づけられました。日本の温泉卵みたいなものですね。ただ、噴き上がる熱水で火傷する人が続出したため現在は調理禁止になっています。
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最後はBlue bell Pool。言われてみればベルの形に見えないこともありません。f:id:greenbirdchuro:20190704230201j:plain

 

エストサムにあるプールは色も形も様々。同じエリアに全てが収まっているとは思えない多彩な景観で、その背部に広がるイエローストーン湖とも相まった美しい景色を楽しむことができました。公園で一番美しい場所と評する人が多いのも納得です。

 

さて、見どころが詰まったオールドフェイスフルへ向けて出発です。

 

 

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