時たま、旅人

自称世界遺産ハンターが行く!旅好き会社員の備忘録

グレートオーシャンロードで巡る2つの国立公園

美しい海岸線を疾走する自動車のCM映像を撮影するために、世界中の自動車メーカーがこぞって訪れるというグレートオーシャンロード。SHARPの「IGZO」のCMやMr.ChildrenのPV(Tomorrow never knows)の撮影地としても知られるその景色を映像で目にしたことがある人は多いはずです。わたしなんかCGを疑ったこともあるくらい・・・。その絶景が本当に実在するのか(CG合成は無いのか)を確かめるためにグレートオーシャンロードに行ってきました。

 

メルボルンの南西部に位置するトーキーからアランズフォードまでの243kmに及ぶグレートオーシャンロード。特に奇岩群が集まったポートキャンベル周辺の海岸線一帯は、ポートキャンベル国立公園に指定されています。頑張って運転すれば、メルボルンから日帰り観光が可能な距離ですが、長時間の運転でカンガルーと衝突事故なんてことになったら面倒なので、現地ツアーを利用することにしました。メルボルンを早朝に出発したバスは、多国籍の観光客を載せてグレートオーシャンロードを目指します。

 

メルボルンから2時間ほどのLake Colacでトイレ休憩とコーヒーブレークです。f:id:greenbirdchuro:20190721220251j:plain

 

大きな湖の周りにはトレイルが敷かれ、長閑な景色が広がっていました。この日はほとんど無風で、穏やかな湖面にさざ波が立つのは遠くで水鳥が飛び立った時くらいです。f:id:greenbirdchuro:20190721220300j:plainf:id:greenbirdchuro:20190721210812j:plain

 

ひた走るバスの車窓にポートキャンベル国立公園の美しい海岸線が見えてきました。最初の停車地はトゥエルブ・アポストルズ・ビジターセンター。道路を挟んで海の反対側にあるこのビジターセンターから道路の下をくぐって海側に渡ります。さらにトレイルを進むと、そこにあったのは映像で見たままの絶景でした。CG合成を疑った景色は実在するどころか、映像よりもずっと迫力があるものでした。f:id:greenbirdchuro:20190721223419j:plain

 

展望台から西側にある12使徒の奇岩群です。使徒になぞらえられた巨大な海食柱が白波の立つ荒海の中に何本もそびえ立つ姿は12使徒の呼び名に相応しく荘厳で神々しいものでした。海から生えているように見える奇岩は、もちろん生えているわけではなく、1000万年以上前までは本土の一部だったものです。南極から押し寄せる荒波と風に削られた断崖絶壁が形成した洞窟やアーチの天井が崩落して柱状に海に取り残され、奇跡のように次々とこの場所に使徒たちが生まれたのです。f:id:greenbirdchuro:20190721210822j:plain

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展望台の東側のCastle Rockという絶壁の向こうにも2つの使徒の姿が見えました。ところが、立ち位置を変えて数え直しても12使徒には足りません。かつては、母豚と子豚と呼ばれていたこの奇岩群を観光事業のイメージアップのために12使徒に改称したという経緯もあるので、ちょっと盛っちゃったのかな?とも思いましたが、12体の奇岩が存在していたのはどうやら事実のようです。 この景色の創造主でもある過酷な自然による侵食は今でも年間2㎝の速度で進み続けていて、そのせいでいくつかの使徒が崩落してしまったというわけです。海食柱の形成途中と思しき崖も見つかっているので、次に訪れた時はさらに使徒の数が減っているかもしれないし、新たな使徒が誕生しているかもしれません。f:id:greenbirdchuro:20190721215617j:plain

 

海岸の沿ったトレイルを歩きながら、自然の作り上げた奇跡の絶景を堪能しました。f:id:greenbirdchuro:20190721220427j:plain

 

ロック・アード・ゴージ(Loch Ard Gorge)は、ビジターセンターから4kmほど西に進んだ場所にありました。駐車場から少し歩いた先に見えてきたのは奇岩壁に囲まれた小さな入江です。奇岩壁を作り上げた荒々しい波もこの小さな入江には入り込めないようで、透明度の高いエメラルドグリーンの波がプライベートビーチのような美しい砂浜に穏やかに打ち寄せています。この場所は、ジブリ映画「紅の豚で主人公ポルコ・ロッソの隠れ家のモデルになった場所だとも言われています。f:id:greenbirdchuro:20190721210836j:plain

 

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階段でビーチまで降りてみました。ヨーロッパからの移民を乗せた大型帆船ロックアード号がこの沖合で座礁し、沈没してしまったのは1878年6月1日のことでした。生存者は、家族で移民してきた18歳のエバと乗員だったトムのたった2人だけ。まだ15歳だった水夫見習いのトムがエバを海中から引き揚げて救ったのだそうです。この土地に残ったトムに対し、家族を失ったエバは結局ヨーロッパに帰ってしまいました。入江の近くには、その時に命を失った乗客と乗組員のお墓があります。沈没船に由来する入江の名前には、そんな悲劇を繰り返さないようにという願いが込められています。f:id:greenbirdchuro:20190721210845j:plain

 

ビーチから振り返るとライムストーン・ケーブ(Limestone cave)と呼ばれる大きな洞窟がありました。中には入れませんが、人が暮らせそうな大きなスペースです。自然の力の偉大さを思い知らされっぱなしです。f:id:greenbirdchuro:20190721210949j:plain

 

アイランド・アーチウェイ(The Island Archway)の看板は、入江の東側にありました。とは言っても、そこにあるのは十二使徒のような2本の海食柱だけで、アーチらしきものが見当たらりません。どうやら2つの岩を繋いでいたアーチ部分はとうに崩落して無くなってしまっていたようです。f:id:greenbirdchuro:20190721210954j:plain

 

レーザーバック(The Razorback)は、ロック・アード・ゴージの東側にありました。細長い絶壁はまるで剃刀の刃のように鋭く尖っています。幾重にも岩に刻まれた地層に地球の歴史を感じます。f:id:greenbirdchuro:20190722193256j:plainf:id:greenbirdchuro:20190722211840j:plain


レーザーバックの東側の美しい海からもたくさんの海食柱がそびえ立っています。f:id:greenbirdchuro:20190721211013j:plain

 

将来のアーチや海食柱の予備軍となりそうな洞窟も出来ていました。f:id:greenbirdchuro:20190721211650j:plain


The Wreckは、まさにロックアード号が難破した場所のようです。こんなに天気の良い日でも白波の立つ荒海なのに、ロックアード号の遭難した夜は嵐だったそうです。あちこちに海食柱のある断崖絶壁の海岸線を帆船で航海するなんて自殺行為にも思えてしまいます。遠いヨーロッパから何ヶ月もかけて航海してきたのに、夢見た新天地の目の前で命を落とした人々がどれだけ無念だったか想像もつきません。f:id:greenbirdchuro:20190721211102j:plain

 

最後に向かったのはギブソンズステップ(Gibsons Steps)でした。断崖絶壁に作られた険しい階段をかろうじて降りていくと、広い砂浜に降り立つことができました。砂浜から見上げた断崖の圧倒的な迫力に思わず足がすくみます。遠くの海岸線には12使徒の東側の2体が見えています。長いグレートオーシャンロードの中で、実際に浜に降りて海岸線を眺めることができる場所は、このギブソンズステップだけです。f:id:greenbirdchuro:20190721211107j:plainf:id:greenbirdchuro:20190721211113j:plain

 

海岸の内陸側には羊が放牧されていて、これぞオーストラリアという光景です。f:id:greenbirdchuro:20190721211120j:plain

 

グレートオーシャンロード沿いには、ポートキャンベル国立公園以外に趣の違ったもう1つの国立公園があります。ずっと海岸線を走っていたグレートオーシャンロードがアポロベイの南側にあるマレンゴあたりから内陸部を走り始めると、そこには緑の生い茂るグレートオトウェイ国立公園が広がっていました。

 

その一画にある温帯雨林の原生林マイツレストは、ジュラ紀の植物や珍しい生き物が数多く生息するオーストラリアでも珍しい自然保護区です。今回は、ここで30分程度のブッシュウォークをしました。1億5000万年前の原生林の中にはオーストラリアで最も高い木もありました。生い茂ったシダのせいで、見上げても高さがわかりませんでした。f:id:greenbirdchuro:20190721211127j:plain

 

3〜4人が入ってしまえそうな大きな空洞が幹に空いた大木もありました。ここをくぐると子宝に恵まれるんだそうです。f:id:greenbirdchuro:20190721211148j:plain

 

ブッシュウォークの後は、ポイントホードンの北にあるケネット川の近くまで戻って来ました。お目当ては、この周辺に生息する野生のコアラです。そう簡単に見つかるわけないと思っていたら、頭上の木に何頭もいてびっくりしました。以前に他所で抱っこしたこともあるんですが、ビクトリア州ではコアラに触るのは禁じられています。と言っても触れる所まで降りてきてくれることは滅多にないようです。f:id:greenbirdchuro:20190721211156j:plain

 

コアラ以外にもたくさんの鳥がいました。ペットショップか動物園でしか見たことないようなカラフルな鳥が何種類もやってきては、餌を求めて観光客の肩にとまります。野鳥のはずなのに観光客を相手にする人馴れぶりはプロのようです。f:id:greenbirdchuro:20190721211204j:plainf:id:greenbirdchuro:20190721211212j:plainf:id:greenbirdchuro:20190723183128j:plain

 

夕日が水平線に沈む様子も見ることが出来ました。f:id:greenbirdchuro:20190721211222j:plain

 

締めくくりはメモリアルアーチ。240km以上に及ぶ長い道路で、グレートオーシャンロードの表示があるのはココだけ。第一次世界大戦によって大黒柱を失った主婦たちによって始まった工事の担い手は、次第に帰還兵たちに変わっていきました。この事業の大きな目的は、帰還兵に仕事を与えることだったからです。重機などの設備がない時代でしたから、人力だけに頼った道路工事は16年にも及びました。このメモリアルアーチには、建設に携わった多くの人々だけでなく、戦争で失われた兵士たちへの敬意も込められています。多くの人々の思いや苦労が詰まったグレートオーシャンロードは今やこの国の財産になっています。f:id:greenbirdchuro:20190721211230j:plain

 

Mr.Children 1992-1995

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The Great Ocean Road : Scenic and Historic Views

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