メキシコシティ上陸
夜通し続いた「VIVA!!MEXICO!(メキシコ万歳!)」の叫び声が聞こえなくなってきたのは夜が白み始めた明け方のことでした。
ホテルのスタッフから屋上テラスで朝食をとるか聞かれたので、迷わず外で食べることにしました。朝靄のかかるグアナファトの街は昨日の喧騒(夜中のどんちゃん騒ぎ)が嘘のようにひっそりとしていました。朝食はトースト・フルーツ・フレッシュジュース・コーヒーのシンプルなものでした。海外のホテルのビュッフェスタイルの朝食では食べ過ぎて後悔することが多いので、ちょうど良いと感じました。この景色の中ならコーヒーだけでも十分に贅沢な朝食になったかもしれません。目にも心にも景色を焼き付けてグアナファトを後にすることにしました。最後に歩いたフアレス通りはとても静かでした。隙間もないくらい通りを埋めていた人々も叫び疲れて今頃は自宅で死んだように眠っているのでしょう。
行きは登り階段だったこともありスタッフにスーツケースを運んで貰いました。まだ朝早かったせいか、独立記念日ではしゃぎすぎたせいかスタッフが来ていないということだったので、階段の下にタクシーを呼んで貰って自分でスーツケースを運びました。下りとはいえスーツケースを持っての96段はキツかった・・・。
タクシーで向かったグアナファトの郊外の高速バスターミナルは、まだ新しそうな近代的外観です。グアナファトの治安が良くてもメキシコの国レベルの治安は決して良いとは言えません。お気楽なわたしでもタコスやソンブレロだけでなく「麻薬」とか「カルテル」なんて物騒な言葉を連想してしまいます。決して海外ドラマの見過ぎだけではないと思うんですよね・・・。そんなメキシコで長距離バスに乗るなんてドキドキもいいところでしたが、バスターミナルらしい外観を見てなんだか勝手に安心しました。
ターミナルの中は比較的閑散としていました。バス会社ごとにカウンターが並んでいて、その中で一番早くメキシコシティに着くバスのチケットを買いました。
空席が多く席は選び放題だったので、少しでも景色が見れたら・・・と窓側を選択しました。手渡されたチケットもQRコードもついた予想よりしっかりしたものです。
さらにメキシコシティ行きのバスはわたしの予想を裏切るキレイな外観で、清潔そうなシートもフカフカ。乗車前には飲み物とお菓子のサービスもあり、定刻出発の快適な5時間のバス旅でした。景色を見たいからという理由で窓側の席を選んだのに、この5時間の記憶が全くありません。写真も撮っていないので、グアナファトの絶景を見た後だと大した景色に思えなくて、眠ってしまったみたいです・・・。
メキシコの首都メキシコシティの北ターミナルに到着しました。さすがに大都会だけあってバスターミナルは賑わっています。到着した人、出発する人、そして見送りや迎えに来た人・・・。しかし、忘れてはいけないのはここがデンジャラスシティだということ・・・。よく見るとどれにも当てはまらなさそうな人も・・・。警戒スイッチをONにし、スーツケースとリュックをしっかりと手繰り寄せました。カメラをリュックの中にしまって・・・だから写真が取れません。今思うとそこまで警戒しなくても良かったかも。
バスターミナルに乗り入れている正規のタクシーに乗って向かった宿泊先は市内でも治安の良いと言われるソナ・ロサ地区のホテルです。
ホテルの近くには独立記念塔がそびえていました。独立100周年を記念して1910年に建造され、今でもことあるごとに人々が集まるメキシコシティのシンボルです。恐らく昨晩は大変な騒ぎだったことでしょう・・・48mの塔の上に輝く黄金色の天使からAngel(アンヘル)と呼ばれていますが、実は天使ではないそうです。右手に勝利と栄光のシンボルである月桂樹の冠、左手に抑圧からの解放を表すちぎれた鎖を持った天使にしか見えない像は「羽ばたく勝利」を意味しているとか。そして塔を取り囲むように台座に配置された像は独立の英雄達でその奥が彼らの霊廟となっています。
ソナ・ロサ地区の歩道や広場では先住民族と思しき人々が路上にシートや布を広げて民芸品を販売していました。
マヤ民族の刺繍は本当にカラフルでかわいいので一つと言わずいくつも欲しくなりますが、欲求に任せて買い物すると自分なりにコーディネートしてるつもりの自宅でギリギリ保たれている秩序がなくなるので、ここは見るだけにしておきます。
メキシコでは、グアナファトのセルビン焼き以外にもプリエラ州のタラベラ焼きとハリスコ州のトナラ焼きが有名です。お土産屋さんに並んでいるものはどれでもないでしょうが、偽物だとわかっていても見てるだけで楽しい気持ちになります。
お皿や壺や装飾品に混じって、何よりも多く売られていたのは陶器の骸骨でした。もともと祖先の骸骨を身近におく習慣があるメキシコでは決して気味の悪いものでも怖いものでもないのですが、貴族を骸骨として描いた風刺画から生まれたキャラクターが人気を呼び、国レベルのご当地キャラになったみたいです。自宅には骸骨を置くのにふさわしいスペースはないので買いませんでしたが、かわいく見えてくるから不思議ですね。それにしてもこれほど骸骨を愛している国は他にはないでしょうね。
この日はホテルから徒歩圏内のレストランで夕食をとることにしました。繁盛店らしく入店待ちの行列が長いです。持ち帰りの人も多かったようで程なくして席に通されました。この日のビールはさわやかな口当たりとほどよいコクのモデロ・エスペシャルとやや甘味のあるヴィクトリア。
席に着くなり運ばれてきた揚げたトルティーヤと一緒にいただきます。色々なチレソースがそれぞれ違ってそれぞれ美味しい、そして辛い・・・。
グアナファトの市場で食べたものより上品な味のポソレはメキシコの定番スープです。
そしてメキシコのソウルフード初タコス!本場らしく小麦ではなくトウモロコシのトルティーヤで焼いた牛肉とタマネギやパクチーやセロリなどの香味野菜がたっぷり包んでありました。さすが地元の人が選ぶ人気店、美味しいんです!タコスを食べればレストランの実力がわかる!なんてわかった風なことを思いながら完食しました。
さらに焼いたトルティーヤにチーズを挟んだケサディーヤもとろけたチーズがわたし好みでした。
タコスがなんなのかもわからずに来店しましたが、このお店のメニューとガイド本を見比べてなんとなくわかりかけてきました。
明日以降の食事も期待できそうです!
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