王宮の歴史と青きドナウ
くさり橋を渡ると、アダム・クラーク広場の向こうに大きく口を開けたようなトンネルが見えます。ハンガリー国内道路の0km地点にあたるこの場所からブダ城の下を抜けるブダ城トンネルは、映画通の方ならエディ・マーフィーとオーウェン・ウィルソンの「アイ・スパイ」でのぶら下がりシーンを思い出すかもしれませんね。アイ・スパイ以外にも多くの映画の撮影に使われてきたこのトンネルの設計者は広場の名前にもなっているアダム・クラークです。
トンネルの横にはブダの王宮の丘へ登っていくフニクラ(ケーブルカー)乗り場があり、観光客の行列ができていました。聖イシュトヴァーン大聖堂でエレベーターを利用した怠け者のわたしですが、今回は道中の景色も楽しめそうなのであえて徒歩を選択しました。
ブダ側の見どころのほとんどは長さ約1.5kmの王宮の丘に集中しています。見所が詰まった王宮の丘の中でもわたしの最初の目的地は当然ながら王宮です。対岸からくさり橋を渡る間にもその堂々とした姿がずっと見えていて、ワクワクしていたんです。王宮の歴史は、1241年にモンゴル軍襲来で木造城壁が破壊された後に難を逃れたベーラ4世が建てた石造りのお城に始まります。その後も崩壊と復旧や増築の歴史を重ねて、今のようなゴシック様式とバロック様式が混在する王宮になりました。王宮の歴史は街の歴史そのもの、名実共にブダペストを象徴する場所です。(こんな遠くまで攻めてきたモンゴルの凄さは気になりますが、ここはサラッと行きます。)
城壁に沿ってなだらかな坂道を登っていきます。レンガ造りの城壁も味がありますね。
そして、目に飛び込んできたのは・・・本当に青い青きドナウ、そしてそびえ立つ聖イシュトヴァーン大聖堂、旧市街の美しいペスト地区とそこからブダ地区にかかる長大なくさり橋。こんな景色を見ながら歩けるなんて徒歩を選んで正解!!登っていくにつれてくさり橋がだんだん眼下になってきて、少しずつ景色が変わっていくのがまた楽しい。気が付くと、これ全部同じじゃないの?と思われる写真をたくさん撮っていました。
ケーブルカーの頂上駅がある石畳の広場の左手に王宮があります。王宮外壁の庭園から見える景色も素晴らしくて、ここから川沿いにたつ国会議事堂の側面が見えました。
王宮に足を踏み入れるべく、狩りをするマーチャーシュ王の噴水を通り過ぎて・・・
王宮の正門にあたるライオン門をくぐると・・・
広々とした石畳の中庭を王宮が取り囲むように建っていました。
歴代の王が居城として使ってきた王宮内には現在は3つの大きな博物館・美術館とセーチェニ図書館が入っています。どれも見応えありそうですが、今回わたしが選んだのは・・・ココ↓↓↓王宮の南端にあるブダペスト歴史博物館です。この歴史博物館の展示は、考古学関連・街の歴史・芸術作品の3つのジャンルに大きく分けられています。カタカナの人名を覚えるのがムリという理由で世界史を選択しなかった理系のわたしですから、西洋史の知識が皆無なんですよ。だから、まず少しくらい街の歴史を知った(かじった)方がいいかなと思ったんです。
早速チケットを買って入場です。ブックマーカーになりそうなお洒落なチケット。
まず、目に飛び込んできた肖像画の人物は、ハプスブルク家とトルコの長年に渡る戦争によって荒廃したハンガリーを復興させたマリア・テレジア女帝。強い女性というイメージですが、意外と優しそうで華奢じゃないですかね。それともそう描かせたのかしら?
13世紀の建設当時の装飾彫刻や柱や壁がとにかくたくさん展示されていましたが、それだけでなく、増改築を繰り返した王宮の設計図や写真もありました。
王宮を飾っていた数々の彫像群。フロアごとに時代を区分して展示してあったので、波乱万丈なブダペストの歴史を時系列で追いかけるように見ることができました。
この博物館が特に面白いのは、王宮の地下室や洞窟だったところを展示室として利用しているところです。地下へと階段を降りて行くと少し温度が下がり空気がひんやりしてきます。
大抵の王宮にも地下室はあるでしょうけど、普通は立ち入り禁止エリアですよね。
空調や光源を管理された小部屋に展示されていたのはアンジュー家の紋章が刺繍されたタペストリー。ハンガリー王国の初代王朝アールパード朝の断絶後、王位を巡る争いを制したのはアンジュール家でした。少しでも触れたらボロボロと崩れてしまいそう。
王宮内の礼拝所は、華美な感じは全くなくて、小規模でとても厳かな雰囲気でした。
王宮の南側にでると、裏庭には物見やぐらがありました。
その城壁にさりげなくかかる時計。文字の配置が変に偏ってるなと思ったら日時計なんですね。わたしの腕時計とほぼぴったりの時間を指していました。
入ってきた順路を逆送し、フニクラ頂上駅の広場まで戻ってきました。
駅のすぐ近く(王宮の北側)にあるネオ・クラシック様式の建物は1806年築のサンダーパレス(大統領官邸)です。第二次世界大戦でほぼ全壊してしまいましたが、ハンガリー民主化と共に徐々に再建・改装され、2003年以降は大統領の公邸として使用されています。日本の首相官邸と同様で一般公開はされていません。わたしは時間が合わず見れませんでしたが、衛兵交代は定時に見ることができるそうです。
サンダーパレス前の広場から見たブダ地区です。王宮エリアは元々は貴族や裕福な人々の生活圏だったため、今でもその末裔が多く生活していて、商業エリアのペスト地区に比べると閑静な住宅街という雰囲気ですね。
王宮の丘の散策はまだまだ続きます。
夢見る美しき古都 ハンガリー・ブダペストへ 最新版 (旅のヒントBOOK)
- 作者: 鈴木文恵
- 出版社/メーカー: イカロス出版
- 発売日: 2019/03/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る