時たま、旅人

自称世界遺産ハンターが行く!旅好き会社員の備忘録

イスラム文化香るかつての王都グラナダ

2018年の元旦も早起きでした。「1年の計は元旦にあり」が真なら今年も忙しなく動き回る年になりそうだなと思いながら、大晦日の延長戦をしている酔っ払いを避けるようにコルドバの鉄道駅のすぐ北側にあるバスターミナルに向かいました。既にチケットは入手済みですが、毎度のことながら、早く来すぎたようで誰一人見当たりません。f:id:greenbirdchuro:20190816215552j:plain

 

民族大移動が繰り広げられる感謝祭やクリスマスと違って、キリスト教国での大晦日と正月は普通の祝日よりちょっと特別なくらいなので、移動する人もあまりいないのか、ターミナル内は閑散としていました。お馴染みの大手バス会社ALSAでシエラ・ネバダ山脈の北西麓に位置するグラナダまで約2時間のバス旅です。f:id:greenbirdchuro:20190816223821j:plain

 

思いがけず車窓から初日の出を拝むことができました。太陽の国を地で行くアンダルシアの初日の出は格別です。楽しい1年が始まりそうな予感・・・。f:id:greenbirdchuro:20190817085824j:image

 

チェックインには早い時間なので、ホテルに荷物を預け、街歩きを始めます。

グラナダの玄関口とも言えるイサベル・ラ・カトリカ広場にやってきました。大きな噴水の中央にあるモニュメントは、コロンブスが航海への出発を報告するためにイザベラ女王に謁見する場面を表現したものです。f:id:greenbirdchuro:20190816221625j:plainf:id:greenbirdchuro:20190818093701j:plain

 

レジェス・カトリコス通りを北東に向かうと、ヌエバ広場が見えてきます。格子柄にタイルの貼られた長方形の広場の真ん中にはイスラム風の噴水があり、広場の周囲にあるカフェやレストランのテラス席が並んでいます。ヌエボ(バ)は新しいという意味のスペイン語ですが、ヌエバ広場と名のつく広場が新しかった試しはありません。実際のところ、この広場が造られたのは16 世紀です。f:id:greenbirdchuro:20190816222437j:plain

 

ヌエバ広場周辺には、歴史を感じさせるステキな建物が並んでいます。このバロック様式とルネサンス様式が混在した美しい外観の建物は、アンダルシア高等裁判所です。広場が造られたのと同時期に王立大審問院として建てられました。街でも指折りのバル広場と歴史ある裁判所というミスマッチもグラナダらしい気がします。f:id:greenbirdchuro:20190816222447j:plain

 

広場を背にして左側にはレイジェス・カトリコス通りというメインストリートのが伸びています。元旦の午前中ということもあってか比較的閑散としていました。ところが、翌日の午後になると・・・f:id:greenbirdchuro:20190816221641j:plain

今までどこに隠れていたんですか?という人出で車道も歩道の境界もわからないほどになっていました。何か始まるのかな?と思って地元の人に紛れて待っていると・・・f:id:greenbirdchuro:20190816222718j:plain

予想通り!何かお祭りらしきものが始まりました。鮮やかな衣装に身を包んだ人々や複数のマーチングバンドが長い列を成して大通りをパレードしていきます。地元の人に尋ねてみても、まだスペイン語を勉強し始めたばかりだったわたしにはチンプンカンプン・・・。後で調べてみると、トマ・デ・グラナダというグラナダ開城記念日のパレードだったことが判明しました。f:id:greenbirdchuro:20190816222722j:plain開城記念日(1月2日)は、すなわちレコンキスタが完了した日です。今更ですが、レコンキスタとは、キリスト教国家がイスラム支配下にあったイベリア半島を取り戻す(再征服・国土回復)ための活動です。8世紀から始まったレコンキスタによって、13世紀半ばにはイベリア半島に残るイスラム勢力はグラナダのナスル朝のみになっていました。しかし、ここからが長かった・・・。アルハンブラ宮殿は難攻不落、しかもキリスト教勢力の内輪揉めもあってなかなかグラナダを陥落させることができません。グラナダの内乱という好機を逃さず攻め入ったカスティーリャがアルハンブラ宮殿を陥落させ、ナスル朝が滅亡したのが1492年1月2日。このパレードが祝っていたのは、何百年もかけたレコンキスタの終結した記念日だったというわけです。

 

旧市街の中心に建つグラナダ大聖堂(カテドラル・サンタ・マリア・デ・ラ・エンカナシオ)は、建物自体が大きい上に、周囲の広場や道路が狭いため、その全体像を写真に収めることができません。大聖堂が最もよく見えるラス・パシエガス広場でさえも、正面ファサード以外は周囲の建物に遮られてしまっています。しかし、そこから見える大聖堂の姿は、アンダルシアの青空によく映え、「スペインルネサンス建築の傑作」の評価に違わぬ美しく堂々とした佇まいです。建設が始まった当初はゴシック様式でしたが、着工からわずか5年ほどでルネサンス様式に変更になっています。その上、1704年の完成まで180年もの月日を要したため、バロック様式も混在する「ヨーロッパの教会あるある」の状態を見ることができます。f:id:greenbirdchuro:20190816215606j:plain

 

当初は、正面ファサードの両脇にそれぞれ81mの塔が建つ予定でした。しかし、左側にかろうじて見えている塔は大聖堂身廊の屋根より少し高い程度の57m。しかも、途中で工事を止めたことが明らかな塔とは言い難い姿です。なんでも財政難のために工事を続けることができなかったとか。これも、「ヨーロッパの教会あるある」です。f:id:greenbirdchuro:20190817184908j:plain


右側に至っては、塔の気配すらなく、代わりにサグラリオ教会が造られています。大聖堂への入場は、内部が繋がっているこのサグラリオ教会から。ちなみにカトリック両王の聖廟がある王室礼拝堂も大聖堂やサグラリオ教会と一体になっています。かつて、この場所にはナスル朝の巨大モスクが建っていました。これらの建物がすべてモスクの跡地にできたことを考えるとモスクの規模の大きさが覗えます。f:id:greenbirdchuro:20190816215558j:plain

 

サグラリオ教会の側面にあるオフィシィオス通りを歩くと、王室礼拝堂が見えてきました。王立礼拝堂は、カトリック両王の命で、王家の墓所としてエンリケ・デ・エガスによって16世紀前半に建造された後期ゴシック様式の建物で、その霊廟にはフェルナンド2世と妻イサベル1世の棺が安置されています。両王はレコンキスタ終結の地となったグラナダに思い入れが強かったようですね。味のある外観をした礼拝堂ですが、レコンキスタを終結させて国土を統一し、コロンブスに出資して新大陸に植民地を築いて、本国の国力を高めたカトリック両王の偉大な業績を考えると質素に思えます。「盛大な葬儀を行って立派な墓所を造るくらいなら貧しい教会に寄付するように」というイサベル1世の遺言が果たされたということでしょうか。f:id:greenbirdchuro:20190816220030j:plainf:id:greenbirdchuro:20190816220033j:plain

 

大聖堂の南側は、イスラム支配時代に絹織物の取引所だったアルカイセリアと呼ばれる場所です。現在もスークの雰囲気を残したバザールといった感じで、お土産屋さんが軒を連ね、買い物客で賑わう観光名所になっています。f:id:greenbirdchuro:20190816215823j:plain

 

アルカイセリアに並ぶ土産物のラインナップは、皮製品・洋服や服飾小物・水タバコの装置・陶器・工芸品 etc・・・。商品の真贋を見分ける眼力など持ち合わせていないので、押しが強くなくて、わたしのつたないスペイン語に気長に付き合ってくれる感じの良い店員さんのお店でストールを数枚購入しました。f:id:greenbirdchuro:20190816215826j:plain

 

アルカイセイアを抜けた先にあるヒブランブラ広場は、カフェやレストランに囲まれた賑やかな場所です。グラナダがイスラム支配からキリスト教支配へと変わった最初に造られた広場のようです。広場の中心には、噴水のあちこちに巨人が配されたロス・ジャイアンテスの噴水(つまり巨人たちの噴水)がありました。f:id:greenbirdchuro:20190816224134j:image

 

1月1日でどこも開いてないので、アルバイシン地区のロナ展望台まで登ってみました。旧市街から程よい距離で、グラナダ市内が一望できます。f:id:greenbirdchuro:20190816224641j:image

 

プラセト・サン・ミゲル・バホまで足を延ばしてみました。 f:id:greenbirdchuro:20190816225138j:plain

なかなかの眺めです。f:id:greenbirdchuro:20190816225210j:plain

 

さらに、サン・ニコラス展望台まで欲張ってみました。f:id:greenbirdchuro:20190816231906j:plain

翌日に訪れる予定のアルハンブラ宮殿が目の前に見えています。f:id:greenbirdchuro:20190816231915j:plain

宮殿の向こうに見えている冠雪の美しい山々は、シエラ・ネバダ山脈。f:id:greenbirdchuro:20190816231919j:plain

いよいよアルハンブラ宮殿に向かいますよ。

地球の歩き方フォトブック 旅するフォトグラファーが選ぶスペインの町33 (地球の歩き方 フォトブック)

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