大航海時代に栄えた世界遺産の街セビリア
またまた早起きしてコルドバ駅からスペイン国鉄の旅です。旅というのも大袈裟で、セビリアのサンタ・フスタ駅まではたった45分。目的地セビリアは、70万人が暮らすスペイン第4位の都市にしてアンダルシア州の州都です。レコンキスタ前後の2つの文化が融合した建築群や複数の世界遺産のある見所満載の都市です。
駅から南西に歩いて突き当たったルイス・モントト通りという大通りの中央分離帯には紀元前1世紀頃に建設されたローマ水道橋の一部カニョス・デ・カルモナが残されていました。セビリアから15km離れたアルカラ・デ・グアダイラから運ばれた水はアルカサルの大きな貯水池を満たし、各地に配水されていたそうです。修復・増築を繰り返しながら1912年まで稼働していたというから驚きです。
メネンデス・ペラヨ通りに沿うような細長い形のムリージョ庭園の中には、1929年のイベロ・アメリカ万博のために設計されたコロンブスの記念塔が建っていました。1492年、スペイン王室と契約を交わしたコロンブスが、新大陸を求めてサンタ・マリア号で船出したのはここセビリアの港でした。塔の中程にはアメリカ大陸に舳先を向けたサンタ・マリア号が配されています。
市の中心部を南に向かうと、かつてサン・テルモ宮殿の庭園の一部だった広大なマリア・ルイサ公園の中に、直径200mの半円形をした総面積50,000㎡の広大なスペイン広場(エスパニャ広場)が見えてきました。雲ひとつないセビリアの青空に幾何学模様にデザインされた鮮やかな敷石と煉瓦色の建物がとても映えています。数あるスペイン広場の中でこれほど美しいものがあったでしょうか?
旧市街の大聖堂との間を行き来する馬車の雰囲気もスペイン広場にぴったりです。値段交渉が面倒で敬遠してしまいがちな観光用馬車ですが、厳しく管理された揉め事とは無縁のセビリアの観光馬車は安心して楽しめるそうですよ。
スペイン広場は、イベリア半島とスペイン語圏の国々との交流を目的に1929年に開かれたイベロ・アメリカ博覧会の会場として造られたものでした。南北両端にそれぞれ高い塔を伴った長い回廊のあるムデハル様式の建物は、セビリア出身の有名建築家アニバル・ゴンサレスによって設計されたスペイン館です。半円は中南米の方角を向いており、両手を広げて中南米の国々を迎え入れます!というスペイン側のメッセージが込められたものになっています。
広場の真ん中にある噴水からは勢いよく水が噴き上げ、その周囲には運河のような水路が巡らされています。パティオなんてかわいらしい規模ではありませんが、噴水と水路の組み合わせはイスラム庭園のイメージそのものです。全長515mの運河の中ではボートを漕ぎながらのんびり行き来する人々の姿が見られました。
運河にかかる4本の橋の欄干は、色タイルで鮮やかに装飾されています。映画「スターウォーズ・クローンの攻撃(エピソード2)」でアナキン・スカイウォーカーとアミダラ王女が歩いた回廊や橋の舞台となった場所です。惑星ナブーはこんなところだったのか!思いがけない聖地巡りになりました。
建物の一部はアンダルシア州政府のオフィスとして利用されていますが、ムデハル様式の装飾が施された建物の内部に入ることもできます。映画「アラビアのロレンス」の中では、イギリス軍の駐屯するホテルとして撮影に使われていますが、ムデハル様式のおかげエジプトのカイロという設定にもあまり違和感は感じません。
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半円に広がった回廊の壁面に設置された58か所のベンチには、カナリア諸島やバレアス諸島を含むスペイン各県の紋章とそこを象徴する歴史的な出来事・地図が描かれたタイル画がはめ込まれていました。
せっかくなのでセビリアベンチに座りたいと思ったのですが、端から端まで探しても見つかりません。後で知ったことですが、セビリアだけはもともとブースがないんだとか。その代わり、一角にセビリア旧市街地図とセビリア県の農業地図のタイル画を見つけました。
旅の序盤で滞在したマラガのタイル画にはヒブラルファロ城が描かれています。
スペインの主要都市でわたしが唯一訪れていないバルセロナ。待ってろよ!
紋章が切れちゃっているけど世界遺産の古都トレド。
タイルがだいぶ傷んじゃっていますが、サンタンデル。
トラムの走るサン・フェルナンド通りを歩いて世界遺産の集まった旧市街の中心部を目指します。
通り沿いに、石造りの立派な門柱がなんともグッとくる歴史ありげな建物を見つけました。地図ではセビリア大学ですが、掲げられたタイル看板には王立タバコ工場と書かれています。もしかして?オペラ「カルメン」の冒頭に出てくるあのタバコ工場!!ドン・ホセが女職工として働いていたロマ人のカルメンと出会い、その後のジェットコースターのような(ほとんど下り坂)人生のきっかけとなるあの場所です。
タバコ工場が建設されたのは1771年。王立というだけあって、石造りの建物がとても立派です。わたしが訪れた時は門扉が閉じられていましたが、数十年来セビリア大学のキャンパスとして利用されているので、門さえ開いていればは出入り自由なんだとか。こんな歴史的建造物で送るキャンパスライフ、羨ましいような羨ましくないような。
- アーティスト: クリスティーヌ・バルボー& ジャーヌ・バルビエ& アグネス・バルツァ& ミシェル・マランプイユ& アレクサンダー・マルタ& ジョゼ・ヴァン・ダム& ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団& ヘルベルト・フォン・カラヤン& パリ・オペラ座合唱団
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サン・フェルナンド通りの先にある何叉路にもなったプエルタ・デ・ヘレスという広場の中心にはヒスパリスの噴水がありました。かつてへレスという城壁で囲まれていたのが広場の名前の由来です。ここもまだまだクリスマスムードですね。
グアダルキビル川沿いには黄金の塔と呼ばれる高さ36m・幅15mのどっしりとした石造りの塔が建っています。グアダルキビル川からの侵入者を見張るための要塞としてムーア人が建設したものです。当初は外壁に金色のタイルが貼られてので、その姿が川面に映るとそれこそ黄金色にキラキラと光って見えたそうです。
黄金の塔を構成する3つの部分のうち、ドッシリとした12角形の土台部分は、1221年に完成しました。土台の上に乗った細い12角形の塔は14世紀に造られたもので、黄金の塔のシンボルとも言える一番上の円柱と黄金ドームが追加されたのは1760年のことでした。1992年のセビリア万博開催で、黄金の塔はリスボンの「ベレンの塔」と姉妹協定を結んでいます。現在は海洋博物館および展望台として公開されています。
いよいよ、セビリア観光のメインエリアに入っていきます。
大聖堂とアルカサルの間に建つインディアス古文書館は、証券取引所として1572年に建てられたものです。1784年にカルロス3世の命で新大陸発見に関する文書をまとめる古文書館に生まれ変わりました。膨大な所蔵史料の価値もさることながら、ファン・デ・エレータによるルネサンス様式の建物は、大聖堂やアルカサルと並ぶ世界遺産です。価値ある希少な施設だというのに(しかも無料)、2大スターに挟まれていると霞んでしまうのか、全く行列もできていません。ミーハーなわたしも2大スターに集中するあまり、外観だけでスルーしてしまいましたが、もうちょっと時間があれば行ってみたかったな・・・。
大聖堂・アルカサル・古文書館の3つの世界遺産に囲まれたトリウンフォ広場(勝利広場)は、3つの施設を出入りする観光客でとても混雑していました。真ん中には純白のマリア像を頂いた無原罪の祈りの塔が建っています。
さて、いよいよ本丸に突入です。