アンダルシア上陸・マラガ
2017年、年の瀬も押し迫った頃、年末年始を暖かいところで過ごしたくて、航空券漁りをしていたわたしは、スペインのマラガ行きの格安航空券をみつけてしまいました。暑いのも寒いのも苦手なわたしにとって、同じスペインでもマドリードやバルセロナでもなく、コスタ・デル・ソル(太陽の海岸)沿いにあるこの時期のマラガの温暖な気候は願ってもないところです。地方都市にも関わらず、アメニティのクオリティに定評のあるトルコ航空が就航していて、イスタンブール1回乗継で行けちゃうという掘り出し物のチケットでした。
56万人が暮らすマラガの街の規模は、スペインで6番目、アンダルシア州で2番目になります。1年のうち約300日が晴天だというコスタ・デル・ソルの中心都市で、そのトレードマークのような青い空と青い海を求める(わたしのような)観光客が、年間を通して途切れることなく国内外から押し寄せてきます。
マラガを拠点にしてアンダルシア地方を巡ることにしたので、マラガの鉄道駅とバスターミナルに近接した場所を宿泊先に選びました。海は見えない場所ですが、建物を出た瞬間に頬を撫でた穏やかな風には十分に海の匂いが感じられました。泳がなくても海が近いだけでテンションが上がるというのは人のサガでしょうか?
アラメダ・プシンシパル通りを東に向かうとマリーナ広場の前に大きな彫像群が立っていました。美しい大理石の台座の頂部に立つ銅像がマヌエル・ドミンゴ・ラリオス像です。彼の名前を冠した施設が市内に多く存在することからもこの街の産業の発展と雇用促進に大きく貢献した人物であることが伺えます。
街の功労者の名前がついたマルケス・デ・ラリオス通りは、その道沿いにブランドショップ・レストラン・カフェなどが建ち並ぶ歩行者天国になっています。路上にはクリスマスイルミネーションのものと思われる飾りつけがされていて、とても華やかな雰囲気です。年末年始を海外に過ごすようになって知ったことですが、日本以外のたいていの国では25日を過ぎてもクリスマスシーズンが続きます。年が明けてもまだクリスマスという国だってあります。12月25日が終わった瞬間にツリーが門松に変わり、店先のケーキが半額になって鏡餅やお節の材料に入れ替わる日本とは大違いです。
ちなみに、夜になってイルミネーションが点灯したマルケス・デ・ラリオス通りには幻想的な光のトンネルが出来上がります。
通りを北上していくと、突き当たりにコンスティトゥシオン広場(憲法広場)が見えてきました。観光案内所やショップに囲まれた落ち着いた雰囲気の広場ですが、イベントが予定されているようで舞台が設営されています。背の高いヤシの木がいかにも南国という感じがします。
夜の憲法広場は、昼間の落ち着いた雰囲気とは打って変わって巨大ツリーのイルミネーションが燦々と輝く煌びやかなお祭り広場に一変します。(わたしも含めて)光に集まる虫のように繰り出してきた人々で身動きが取れないほどの混雑ぶりです。
昼間に設置されていた舞台の上では、スペインらしくフラメンコショーが行われていました。プロではなく、地元の婦人会とかサークルの発表会?という感じだったので少し見ただけで人混みから避難しましたけど。
広場からあちこちに伸びる迷路のような細い路地の1本1本がかわいらしく個性的です。モザイクの石畳みが美しいこの通りはコレオ・ビエホ通りです。こんな細い路地にもレストランのテラス席になっていたりするからビックリです。宝探しをしているようなワクワクした気持ちになって、敢えて小路に入り込んでみたりもしました。
モリーナ・ラリオ通りを南下していくとエルカルナシオン大聖堂(マラガ大聖堂)が見えてきました。都会的な雰囲気の市街地に突如と現れたアンティークな佇まいには溢れんばかりの気品があります。建物の周囲の道路や広場がそれほど大きくないため、建物全体を写真に収めるのは難しく、色んな方向から分割して写真を撮っていくしかありません。写真の北塔は87mもの高さがあり、そのおかげでアンダルシアで最も高さのある大聖堂だとされています。
大聖堂の西側にあるオビスポ広場から見た北塔です。レコンキスタによりマラガを支配したカトリック両王の命でメスキータ(モスク)の跡地にこの大聖堂の建設が始まったのは1528年でした。当初はゴシック様式で工事を開始していますが、1782年の終了時まで250年ほどの期間を要しているため、ルネサンス、バロックなどの様々な建築様式が混在する結果になり、完成した大きな石造りの建物の外観はルネサンス様式が基本になっています。
しかも、アメリカ独立戦争への支援で資金不足が生じたため、予定されていた2本の塔のうち南塔については未完のままで工事を終えています。大聖堂の南側にあるボスティーゴ・デ・ロス・アバーデス通りから南塔をよく見ると、柱がむき出しになっているのがわかります。南塔については、完成させるべきとする人とこのままで良いと言う人で意見が割れているようですが、マラガの人々が愛や親しみを込めてこの大聖堂を「片腕の貴婦人」と呼んでいるのを聞くと、このままで良いような気もします。
見学者のための入り口は翼廊のある北側から。装飾の施されたアーチをくぐって中に入っていきます。
円柱のアーチをくぐって大聖堂の中に入ると、市街地の喧騒が嘘のような静寂な空間が広がり、ステンドグラスから差し込む光が身廊とそれを支えるがっしりとした大理石の柱を幻想的に照らしています。柱や天井に施された装飾も美しく上品で、片腕を欠いていながらも、この大聖堂が貴婦人と呼ばれてきたことに納得します。
側廊には17もの小礼拝堂が並んでいますが、ひとつひとつが個性的で見応えがあり、美術館で作品を鑑賞しているような気持ちになります。小礼拝堂といっても主祭壇と言ってよいくらい存在感があるものばかりです。
身廊の中央に向かい合うように2台の大きなパイプオルガンが配置されていて、その間には、彫刻家ペドロ・デ・メイナによって40体の聖人が装飾された聖歌隊席が並んでいます。この重厚感溢れる空間で、パイプオルガンの演奏で聖歌隊の賛美歌なんか聞いてしまったら、わけわかんなくても泣いてしまいそうだと思いました。
聖歌隊席の彫刻もさることながら、クラシックなパイプオルガンがこの空間の雰囲気にぴったりです。迫力ある立派なパイプオルガンですが、近くで見るととても繊細な装飾がされていてステキです。こんなオルゴールがあったらほしいくらい。
とても高い位置にあるので、細部まで写真に収めることが難しいものの、ステンドグラスも鮮やかな色使いで聖堂内に華やかさを添えていました。
地球の歩き方 A20 スペイン 2019-2020 【分冊】 3 アンダルシア スペイン分冊版
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/03/14
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
アンダルシアを知るための53章 (エリア・スタディーズ110)
- 作者: 立石博高,塩見千加子
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2012/11/23
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る