アムステルダム国立美術館 前編
チューリップ、風車、ハイネケンのイメージの強いオランダですが、多くの芸術家(それも巨匠と呼ばれるレベル)を輩出していることでも知られています。ゴッホやフェルメール、レンブラントならわたしでも聞いたことある名前・・・なんだったら作品を鑑賞したことだってありますもんね。実は、アムステルダムは大小様々な博物館や美術館がある芸術の街でもあります。運河巡りに疲れたらどっぷり芸術に浸かってみるのもあり!?
とは言ったものの、今回は数ある美術館・博物館の中から国立美術館一本に絞って鑑賞することにしました。名だたる美術館が他にもたくさんあるのに勿体ない!とお叱りを受けるかもしれませんが、最近気がついちゃったんですけど、1都市1美術館くらいがわたしの芸術キャパシティの限界なんで・・・。
アムステルダム国立美術館は8000点もの展示物があり、中世から現代までのオランダ芸術の歴史を見ることが出来るオランダ最大の美術館です。しかも、365日オープン・休館日なしを世界で初めて実現した美術館です!
でも、アンネの家みたいに行列で入れなかったら悔しいので、しっかり前もってオンライン予約しておきましたよ!
早朝からやってきたのは街の南側にあるミュージアム広場。アムステルダム国立美術館、ゴッホ美術館、市立近代美術館といった美術館のメジャーどころが並ぶ様はまさにアムステルダムの文化の中心地です。もちろん、美術鑑賞に興味のない人も寛げる憩いの場でもあります。
右手見えているのがファン・ゴッホ美術館。ゴッホは嫌いではないけど、同じ作風が続くと飽きることを恐れ今回は避けました。実際はゴッホ以外の同時代の画家やミレーの作品や彼が傾倒していた日本の浮世絵も多く展示されているそうです。左手に見えているのは1888年にこけら落としをしたコンセルトヘボウです。戦前から変わらぬ姿で今もロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の本拠地になっています。ゴッホ美術館の裏手には市立近代美術館があるはずですが、ここからは見えませんでした。
国立美術館の列に並ぶ前に、まずは、観光客らしく I amsterdam のモニュメントでの写真撮影。まだ朝早いので空いていますが、昼間になると人だかりで自分がどこにいるかわからない写真しか撮れません。
いよいよアムステルダム国立美術館に!レンガ造りの風格がある建物は、アムステルダム中央駅を手掛けた建築家カイペルスによる設計です。そっくりでしょ?
北側から見ると運河もあるのでまるっきりアムステルダム中央駅にしか見えません。恥ずかしながら、自分でも中央駅の写真と信じ込んでFacebookにUPしていましたから。
I amsterdamのモニュメントがある南側から入場します。チケット予約済みのわたしは、建物の左側の「VISITORS WITH TICKET」に並びました。わたしと同じく既にチケットを手に入れた抜かりない先客が十数人ほどいますが、バーゲンみたいに美術館で走る人はいないでしようから、今回の闘いの勝利を確信しました。ところが、チケット当日購入者用の右側の入り口には人が並んでいません。開場直前にやっと数人が並んだり程度・・・となると・・・事前予約してない人の方が並ばずに先に入場しとるやないか!なんだこれ?!まぁ、そんな日もありますよね。
開場と同時に順路を無視して、一番の混雑が予想される2階に向かいました。今回のお目当ての絵画の前が人でいっぱいになる前になんとか記念写真を撮りたい(何しに来たのかわからなくなっていますが)!ここは、他の多くのヨーロッパの美術館同様に、フラッシュさえ使わなければ撮影OKなんです。
わたしのお目当ての絵画は、 2階エントランスホールの突き当たりの専用の部屋にありました。階段を駆け上がってきたと言うのに既に人が並び始めているじゃないですか!
お目当ての作品は、世界三大名画の一つにしてこの美術館の最大の目玉でもあるレンブラント・ファン・レインの「夜警」です。集団肖像画でありながら、ただ並べて人物を描くことをせず、市民自警団の出動を描いています。明暗法によって主要人物が強調され、ダイナミックな動きが感じられるドラマチックなシーンです。集団肖像画と言いながら小さく描かれた人(=主要人物ではない)には不満はなかったんでしょうか。夜警というタイトルと黒っぽい背景からまさに今から夜警に出動というシーンだと思っていましたが、夜を描いたものではないそうです。黒い色はニスによる黒ずみなんだとか。タイトルがつけられたのはのは19世紀。レンブラントの時代は絵画にタイトルをつけることはあまり無かったけど、展覧会や個展を開催するようになって必要にかられて・・・ってことらしいですね。
2階名誉の間は名作が目白押しですが、「夜警」の次に人だかりが出来ていたのはフェルメールの「牛乳を注ぐ女」でした。展覧会があれば必ずや大盛況という日本でも人気が高いオランダを代表する画家ですが、特にこの絵は学校の美術の教科書にも掲載されていて馴染みのある(と思っている)、真珠の耳飾りの少女と並ぶ名作ですよね。硬くなったパンに牛乳を注いで食べられるようし、食材を無駄にしないという女性の美徳をたたえた17世紀のオランダ風俗画です。写真ではフェルメール作品の光の加減を十分に堪能することはできませんが、色彩のコントラストが素晴らしく、窓から差し込む光が使用人が牛乳を注ぐというごくありふれた日常の風景にある種の神々しさを感じます。壁面や籠にのパン、陶器などの細かい質感が伝わってきます。この絵に使われている青の絵の具はラピスラズリが原料の高価なものだそうで、スカートの色鮮やかさに目を奪われてしまうことに納得です。
「ユダヤの花嫁」は旧約聖書を題材にしたレンブラント晩年の代表作です。この作品には、あのゴッホをして「一週間見続けることができたら、寿命が10年縮んでも惜しくない」と言わしめたという逸話も残っています。妻リベカのお腹に優しく添えられたイザクの手が、二人の間に生まれてくる新しい命を暗示していて、神秘的で暖かい気持ちになる作品です。お二人の衣装もなかなか豪華ですけどね。
これは日本の作品ですね。1600年代前半に京都で造られた漆塗りのチェストです。全体に施された源氏物語の蒔絵が繊細で美しいですね。なんでここに?と思ったんですが、東インド会社によってオランダへもたらされたようです。
ヘンドリック・アーフェルカンプの「スケーターのいる冬景色」。17世紀のオランダ画派最初の風景画家の1人ですが、風景もさることながらスケートをする人々の賑やかな雰囲気が丁寧に色彩豊かに描かれていて、冬の寒さを吹き飛ばすような楽しそうな様子にこちらまでウキウキします。
お気に入りは、アドリアン・ピーテル・ファン・デ・ヴェーネの「魂の漁」。初めは鮮やかな色使いに目を引かれましたが、この作品に込められた嫉妬や皮肉がとても面白いと感じました。左にはプロテスタントのオランダ人、右にはカトリックの人々(ベルギー人)が描かれ、両者はその間を隔てている広い川で魂の救済を行っています。プロテスタントは、身なりも気にせずに大きな網で魂の救いを求めているのに対し、カトリック側の網は小さく、しかも金銀財宝を手放そうとしません。それゆえにプロテスタント側の太陽は輝く、植物も生き生きと葉をつけていますが、カトリック側のボートは沈みそうなほど傾いています。当然ながら、作者はオランダ人。わたしはキリスト教徒ではないし、どちらに肩入れする気もありませんが、カトリック教徒にしてみれば忌々しい作品ですよね。
アドリアン・トマシューの「オラニエ公ウィレム1世の肖像」。建国の父オラニエ公はオランダで最も尊敬を集める人物です。スペインのフィリップ2世の支配に抵抗し国王廃位公布をした3年後にフィリップ2世の送った暗殺者によって亡き者にされました。静かな表情がなにか思案しているようにも憂えているようにも見えます。
お目当ての夜警を鑑賞することも写真に収めることもできましたが、まだまだ後半に続きます。
アムステルダム国立美術館―アートを楽しむ最適ガイド (名画に会う旅)
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